週刊ベースボールONLINE

伊原春樹コラム

伊原春樹コラム「チームを鼓舞し、一体感を生む 茨城GG・片岡安祐美監督のチームを率いる姿」

 

茨城GGの片岡安祐美監督/写真=BBM


 9月に入り、プロ野球も後半戦に突入し、優勝に向けて連日熱戦を展開しているが、社会人野球も“聖地”に向けた激闘が繰り広げられている。黒獅子旗を懸けた戦い──。東京ドームで開催される都市対抗野球大会の予選が行われているのだ。今年は東京五輪の予定があったので、例年の8月ではなく、11月下旬に開幕。社会人でプレーする選手は皆、都市対抗で優勝することを夢見ていると言っても過言ではない。

 私は今、茨城トヨペットでヘッドコーチを務めている。8月29日には1次予選・県大会に臨んだ。相手は茨城ゴールデンゴールズ。欽ちゃんこと萩本欽一さんが2005年に創設したクラブチームだ。現在は女子野球選手として名を馳(は)せた片岡安祐美が監督を務めている。社会人野球では初めての女性監督だ。試合は接戦となったが、茨城トヨペットは6投手の継投で茨城ゴールデンゴールズ打線を3安打に封じ込め、4対2と勝利した。

 この試合で私が感心したのは片岡監督の姿勢だ。もともと高校球児で言えば甲子園を目指した大会となるわけで、負けられない意地と意地のぶつかり合いとなって、士気は高まるのだが、片岡監督が発する覇気はすさまじい。試合が始まるとベンチの最前列に立って、選手にゲキを飛ばす。選手を時に励まし、時に鼓舞する。監督のこういった姿勢は選手の励みになるのは間違いない。

 そうなると自然と選手にも活気が生まれてくる。ベンチにいる選手、コーチの誰もが腰を下ろすことはしない。前のめりになって、試合に入り込んでいる。この一体感は見ていて、非常に気持ちいいものだ。

 これはプロも見習うべきものだろう。プロの世界では意外と打撃コーチは守備をしているとき、投手コーチは攻撃をしているとき、つまりは目の前で動いているプレーが自分の担当外のときは気を抜いてしまっているものだ。私はコーチ時代、片時も集中力を切らすことはなかったが、案外そういうふうな形のコーチは多い。

 しかし、果たしてそれでいいのだろうか。攻撃時も守備時もチームは戦っているのだ。誰かが弛緩した空気を発してしまうと、それが伝染してチーム内を覆ってしまう。それでは一体感が生まれるはずがない。やはり、強いチームは相手にスキを見せることなく、選手だけでなく、ベンチも一投一打に集中している。片岡監督の姿勢を見て、あらためてその大切さに気が付いた次第だ。

 ただ、片岡監督も“激しい”だけではない。「“男性脳”の野球界に“女性脳”が入ることで、男性には気付けない細やかな部分に気付くことができるのはプラス。それに“女性ならでは”の発想や声掛けは大切にしています」と語っていたことがあるそうだが、この試合でも負けて悔しさが募るであろうにもかかわらず、うなだれている選手に声を掛け、なぐさめていた。こういった気遣いは女性ならではだろう。

 さらに、私に対しても「伊原さん、今日はありがとうございました!」と気持ちのいい挨拶(あいさつ)。片岡監督の奮闘をこれからも期待したい。

PROFILE
伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。

関連情報

伊原春樹の野球の真髄

座右の銘は野球道。野球評論家として存在感を放つ伊原春樹の連載コラム。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング