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「ナイター」は和製英語ではなくアメリカ製?
『週刊ベースボール』は58年ではなくすでに50年に創刊?
面白裏話二題

 

50年7月5日、後楽園球場の初ナイター[大映-毎日]でのリッジウェイ大将の始球式。左は大映・スタルヒン投手=『後楽園の25年』[後楽園スタヂアム発行]より


 先週号でナイターは和製英語の傑作、というようなことを書いたが、高島俊男さんの『お言葉ですが……(6)イチレツランパン破裂して』(文藝春秋)を読んでいたら、「ナイターは和製英語ではない。アメリカ製である」という話が出てきたのでドキッとした。1949年のAP電の野球記事の中に「NIGHTERS」(複数形だが)の文字があるのが引用されていた。もちろん、ナイトゲームの意味で使ってある。

 ところが、話は一転、そうではない“反証”も挙げてある。62年にある東大教授が英語雑誌に「野球用語としてのナイター」という一文を寄せたのだが、この中に、昭和20年代末にアメリカの各新聞社に「ナイターを知っているか?」と問い合わせると「ナイターって何だ? 野球と関係があるのか」「ナイター? どんなスペルなんだ?」「何? ナイター? そんなの知らないよ」という返事が返ってくるばかりというところがあった(これには筆者は少しホッとしたのだが……)。

 高島さんの判定は「“一般的に言って”、アメリカに『ナイター』ということばがなかったことは肯定してよい。一九四九年にAP電にあらわれた『OTHER GAMES WERE NIGHTERS』はきわめてまれな用法であり、それがたまたま山崎氏(注:安治氏、元日刊スポーツ記者で、このAP電の発見、保存者)の目にとまった。そして山崎氏はそれを、アメリカで一般的にもちいられている用語だと思った、ということなのではなかろうか?」。

 ウ〜ン。「どんなスペル?」「そんなの知らない」というマスコミ関係者の発言は決定的なのだが、「ナイター」を「ナイトゲーム」の意味で使った記者もいたことはいたのだ。まことにもって言葉の来歴というのは難しい。軽々に「和製だ」と断定して、したり顔をしている自分が恥ずかしくなった。話はもう少し込み入っていて、山崎氏がAP電で「ナイターズ」を見つけたのを思い出したのは、50年7月5日、後楽園球場で初めて「夜間試合」が行われることになったので(大映-毎日戦)これを何と呼ぶかで日刊スポーツの中で議論があったからだった。そこで山崎氏は「ああ、あれをそのままカタカナ書きしよう」と提案、「ナイター」となったのだそうだ。今週はプロ野球の現場とは関係のない話になったが、高島さんの虎の威を借りて? 読者サービスとした次第。

 実は、威を借りついでにもう1つ書きたいことがあった・・・

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岡江昇三郎のWEEKLY COLUMN

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プロ野球観戦歴44年のベースボールライター・岡江昇三郎の連載コラム。

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