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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「日本シリーズ」

 

元巨人、同じ捕手出身の西武・森監督にライバル心


 前号の話の続きである。

 1973年、南海対巨人の日本シリーズ。スコアラーの情報によると、巨人のエース・堀内恒夫は「バッティングがいい」「特にカーブに強い」という。「ピッチャーのくせにカーブ打ちがうまいなんて、おかしいな」とは思ったものの、ピッチャーにはカーブの逆球、シュートを投げさせた。第3戦、そのシュートを堀内がドーンとホームラン。それでますます、堀内を調子に乗せてしまった。

 野球センス抜群の堀内に対し、相手ピッチャーもストレートは投げてこない。堀内はその心理を読み、カーブを打った。それを見た南海のスコアラーが、「カーブに強い」「カーブは狙われるから、要注意」と評価した。「堀内はヤマを張るのがうまい」、もっと言うなら「ヤマを張って狙ってくるから、注意した方がいい」が正しい情報だったのだ。人の情報は、やはり自分の目で確認してから信じるべしと猛省した。

 さて、この原稿を皆さまにお届けするころには、日本シリーズ進出チームも決まっていることだろう。

 私自身、ヤクルト監督時代は西武との日本シリーズが3度、オリックスと1度。西武・森祇晶監督とオリックス・仰木彬監督は同世代、どうしても負けたくないというライバル意識が強かった。特に森は現役(巨人)時代、セ・リーグを代表するキャッチャーで、ポジションも一緒だったから、正直かなり燃えた。

 初めて対戦した1992年、日本シリーズ前の予想は圧倒的に西武優位。ヤクルトは1勝できれば御の字と言われていた。それもそうだろう。西武の投手陣は工藤公康渡辺久信石井丈裕……野手も辻発彦石毛宏典清原和博秋山幸二デストラーデ…… 錚々(そうそう)たるメンバーだ。そりゃあ、かないやしない。だがそんなことを言い訳にしてもしようがないから、どうにかして勝つ方法を、と考えた。

 力の差がある相手と日本シリーズを戦うときは・・・

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野村克也の本格野球論

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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