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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「捕手型人間」

 

私が口を開けば新聞には「野村が……とボヤいた」


 私は完璧に“捕手型人間”だ。理想主義者で、いつも理想を追いかけている。そりゃあ、何十年とキャッチャーをやっていたら、自然とそうなるだろう。

 理想と現実が重ならないということを認めていながら、理想と現実が重なってほしい。だけどそれが重ならないから、ボヤくわけだ。だから、ボヤキというのは悪いことじゃない。理想主義者は、どうしてもボヤきたくなる。自分の理想と現実が重ならない、その“狭間”にあるのがボヤキである。

 だから私は、選手にキャッチャーの素質があるか、キャッチャーが適性かを見るときは、ボヤくかボヤかないかで判断する。

 田淵幸一とは西武ライオンズで2年間一緒にやったが、彼はまずボヤかなかった。あまりに納得できない配球をしたから、チェンジになって帰ってきたとき「どうしてあそこで、真っすぐで勝負するんだ」と聞くと、「ノムさん、投げるのはピッチャーじゃないですか」と言う。

 こりゃあかんわ、と思った。彼の性格は、少なくともキャッチャー向きじゃない。彼がどうしてキャッチャーをやっているのか、私には分からなかった。体も大きいし、ファーストあたりが向いている。どこからどう見ても、キャッチャーは彼の適材適所に見えなかった。

西武時代、チームメートだった田淵は捕手に向いているように思えなかった


 ただ、ここで念押ししておきたいのだが、私も決してボヤこうと思ってボヤいているわけではない・・・

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野村克也の本格野球論

勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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