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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「サイン」

 

気持ちの切り替えのため作った「お前に任せた」サイン


 1970年、南海ホークスのプレーイングマネジャー就任要請を受けた私は、ドン・ブレイザーのヘッドコーチ起用を承諾の条件とした。

 捕手兼任監督の私が継投策をすべて見る代わり、攻撃面を9割方、野手出身のヘッドコーチに任せたいと思ったからだ。“シンキング・ベースボール”を実践するブレイザーなら、監督のベンチ不在を十二分に補ってくれるだろうと考えた。

 いざ兼任監督を始めてみると、キャッチャーとして守備をしている分には、もともと監督代行のようなことをしていたわけだから、各段変わりはなかった。問題は、チェンジになって、攻撃に入ったときの気持ちの切り替えだった。特に痛いところでホームランを打たれて帰ってきたときなど、「ああ、しまったなあ」という思いを、ベンチに帰っても引きずっていた。私はチームの四番バッターである。気持ちの切り替えができず、整理のつかないまま攻撃に入れば、チームに迷惑をかけてしまう。

 当時、ブレイザーは攻撃の間、三塁コーチャーズボックスに立っていた。そんなとき、私はあらかじめ作ってあった「この回は、お前に任せた」というサインをブレイザーに出した。気持ちの整理がつくまで、ブレイザーに攻撃のサイン出しを代行してもらうわけだ。ブレイザーにはこんなところでも、助けられた。

 サインといえば、日本プロ野球界に初めてブロックサインを取り入れたのは、巨人水原茂監督である・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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