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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「ストッパーの適性」

 

度胸と性格の強さがストッパーの条件


 7月20日の日本ハム戦(札幌ドーム)で、楽天松井裕樹がプロ野球史上初となる10代でのシーズン20セーブを記録した。私は映像でしか松井裕を見ていないが、小柄な体ながら良い球を投げている。ピッチングセンスはかなり高いようだ。一方DeNAでは、新人の山崎康晃がストッパーを務めている。今は適材適所の時代だから、そういう起用もあるのだろう。

 野球はうまくできていて、9つ、ポジションがある。そのうちの1つ、ピッチャーも先発型、中継ぎ型、抑え型とさらにポジションが分かれている。監督は各投手のピッチングスタイル、性格などを見て、適材適所にはめていくわけだ。これにはチーム事情も大きく左右してくる。

 ストッパーは基本、1イニングだから、性格の強い――精神力の強い選手というのが第一条件だと思う。最後の一番大事なところを任せるのだ。最終回、これでもう終わりというところで同点にされたり、逆転されたりするわけにはいかないから、相当な度胸と強い性格が必要になってくる。私が長く監督をやってきた中で、南海時代のストッパー・江夏豊など、その典型だ。「打つなら打ってみやがれ」とばかり、マウンドで相手を威圧する雰囲気を持っている。

南海でストッパーに転向させた江夏は、その資質を十二分に持っていた[写真=BBM]



 そもそも私たちの時代には、“ストッパー”などという仕事がなかった。誰も言ってくれないから自分で言うが、リードしている局面での抑え専門、“ストッパー”なるものをこの世に送り出した最初は、この私である。

 あれは、私が南海監督に就任した1970年だった。日大からピッチャーの佐藤道郎をドラフト1位で獲得した。ところがこの佐藤、度胸は満点だが、球が遅い。まず先発をやらせてみたが、5回もたないのだ。だいたいひと回りももてばいい方。なんせモーションは160キロ、実際来る球は130キロである。バッターは無意識のうちに投球フォームが目に入るため、160キロのモーションに反応して、力んでしまう。そこへ、130キロの、まさに全球チェンジアップ。ごまかし、ごまかし投げさせていたが、次第に相手チームも慣れてきた。

 確か、上田利治が阪急でコーチをやっていたときだったと思う。西宮球場の一塁コーチャーズボックスから大きな声で・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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