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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「清宮幸太郎の打撃」

 

柔軟性はあとからついてくる。まずは豪快さとパワーを全開に


 早実の1年生・清宮幸太郎が、夏の甲子園の話題をさらっている。8月8日行われた1回戦では、愛媛の今治西と対戦。甲子園初安打を放ち、チームも2回戦へとコマを進めた。
※その後、早実は8月13日行われた2回戦で広島新庄を7対6で下し、8月15日の3回戦(東海大甲府)に進出。清宮は広島新庄戦で2安打を放った

 私は西東京都大会決勝から、清宮のプレーを見ている。確かに「2年後のドラフトの顔」として騒がれるのは分かる。しかし、高校1年生にして、守備はファースト。おそらく足が遅いのだろう。ファーストからピッチャーに返す投げ方を見た限りでは、肩も弱いのではないかと思っていた。聞くと、元ピッチャーだったが、肩を痛めたのだという。納得した。そうでなければ、ファースト以外の内野手か外野手をやらせるはずだ。

 一方、バッティング。素質を見抜くのは難しいが、私が気に食わないのは、左バッターであるにもかかわらず、レフト方向への打球が多いことだ。しかも、弱冠16歳。その年齢ならまだ豪快に――空振り一つとっても豪快な空振りをしていればいいのに、どこかうまく打とうというところばかり感じられ、もう一つ魅力を感じない。小手先だけでポンッとレフトへ打っているのが見て取れる。

 マスコミはそんなバッティングを見て「柔軟性がある」などと評価しているが、柔軟性は、年数を重ねれば嫌でも身につくものだ。若いうちはまず、豪快さとパワー。柔軟性はそこまで意識する必要がない。小器用に外角は逆方向へ、内角は引っ張って、と打ち分けるようなケチなことをせず、若いころは外角も内角も、全部ガーンっと引っ張ればいい。そこから“本物”を身につけていくのだ。ましてや、ああいったタイプのバッターは、いずれ内角も外角もすべてホームランゾーンにしなければならないのだ。

1年生ながらチームで三番を打つ清宮。柔軟な打撃より、豪快さを追い求めてほしい[写真=佐藤真一]



 松井秀喜(元巨人ほか)の高校時代の映像を見ると、外角高めのボール球も、思い切り引っ張って、スタンドインさせている。みんな、そうだ。腕には関節があるわけだから、その伸び縮みを使って、内角は腕を縮め、外角は腕を伸ばし、全部引っ張るぐらいのバッティングで良い。

恵まれ過ぎている環境は子どものためになるのか


 しかし、自分の16歳時を考えると、清宮は「すごい」のひと言に尽きる・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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