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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「打撃タイトル独占」

 

“弱者の戦法”駆使する真中監督


8月22日の中日戦[神宮]では4打数連続本塁打を達成。盗塁王も狙える、末恐ろしい打者だ[写真=内田孝治]



 息子(克則)が世話になっている関係で、どうしてもヤクルトの動向が気になっている。勝てばもちろんだが、負けているときでも失点が少ないと、正直ホッとする。バッテリーコーチを務めている息子の責任範囲であるからだ。いかに失点を防ぐかが、彼の仕事。だから大量点を取られて負けると、ついつい「何をやっているんだ」とぼやいてしまう。

 息子とは同じ敷地内に暮らしているが、ふだんは向こうも家にいないことが多いため、なかなか話をする機会がない。しかしヤクルトに限らず、優勝のカギになるのは、やはりピッチャーだ。ここ10年で先発陣の防御率トップのチームがシーズン優勝を逃したのは、わずか1回というデータもあるそうだ。それは自明の理だろう。困ったときに、1対0で粘り勝つ。すると、チームはまた勢いづいてくるものだ。

 確かに“強力打線で打ち勝った”チームはいくつもある。しかし、要はバランス。V9時代にしても、堀内(恒夫)を筆頭に城之内邦雄高橋一三……と投手陣のコマはそろっていた。西鉄の黄金時代もそう。『ダイナマイト打線』が看板だっが、稲尾和久西村貞朗島原幸雄河村英文という4本柱がチームの屋台骨を支えていた。ホームラン、打点、打率は数字も派手に目立つが、防御率は地味だから、話題にならないだけなのだ。

 ヤクルトの真中(満)監督は、私をイメージして指揮していると聞く。すなわち、小技を使いながら1点を取りに行く、“弱者の戦法”。私がヤクルト監督時代に話した、「現役のころから自分が監督になったつもりで野球を見ろ」という言葉を素直に実践していたのが今、役に立っているそうだ。確かに私の監督生活を通して最もミーティングの時間が長かったのは、ヤクルト時代だった。

 ところでそのヤクルトの三番バッター・山田哲人が、プロ野球史上初の四冠王に向かってひた走っている。本塁打王の上、足も速く盗塁王まで取るなんて、まず神様がそんなことは許さないだろうと思っていたが・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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