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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「阪神・和田監督」

 

選手時代はおとなしいイメージばかりの和田監督


混セを勝ち抜くには監督の力が重要となる。和田監督率いる阪神は果たして?[写真=前島進]



 9月9日現在、阪神が首位を走っている。本誌の編集者にも「(阪神)監督時代の教え子さんが、頑張っていますね」と言われたが、私は正直、和田(豊監督)には何も教えていない。ヤクルト監督時代の9年間にすべてを出し切ってしまい、申し訳ないことに阪神、楽天では何もできなかった。

 しかし、チームもチームだった。阪神監督に就任し、キャンプ初日、ミーティングを行ったときのことだ。選手はほとんど誰も聞いていなかった。前チームの選手たちとはあまりに対照的な彼らの姿を見て、もう嫌になった。「こんなチーム、ミーティングをやっても効果ないわ」と思った。すでに私の負けである。

 その面々の中で、和田はおとなしく、クソ真面目な方だった。今、ショートを守っている鳥谷(敬)に似たタイプだろう。私は彼の声さえ記憶にない。おそらく今も、あまりムダ口は叩かないはずだ。それがある意味、阪神のチームカラー。マスコミがうるさいから、余計なことはしゃべれない。あるとき星野(仙一監督)が「もうお前らとは絶対しゃべらん!」と記者連中に大きな声で言ったのが、テレビに映ってしまった。星野の気持ちがよく分かった。

 私もマスコミには、“やられた”ことがある。バッティングにしか興味のなかった、ある選手。相手も足が遅いと知っているからノーマークなのに、一塁に出ても二塁を盗もうという気がまったくない。

「あいつ、ヒット打ってファーストで、打率の計算してんのちゃうか」

 私がマスコミに冗談で言った言葉が、本人に伝わったようだ・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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