門田との対談で蘇った“三悪人”との思い出
ベースボール・マガジン社から12月上旬発売予定の、『南海ホークスFOREVER』巻頭対談のため、大阪へ行った。対談相手は、
門田博光。私が南海監督時代の、三番打者だ。そして(これは対談のとき本人にも言ったのだが)、私が当時『南海の三悪人』と呼んでいたうちの一人。この“三悪人”――門田、
江本孟紀、
江夏豊――に、私は鍛えられた。
3人が3人とも、「右を向け」と言えば左を向く。人の話も聞こうとはしない。門田に「ホームランは狙って打つものではない」と散々言い聞かせ、それでも聞かないから、
王貞治に「ヒットの延長がホームラン」と諭してもらってもやはりダメだった話は、以前ここでも書いた。そのあたりのエピソードも先の対談に出てくるので、ぜひ手に取ってみていただきたい。
そんな話をしていたら、江夏のことを思い出した。彼も“三悪人”らしく、人の言うことは聞かなかった。「走れ」と言っても走らないから、江夏のそばにいた若いピッチャーに、私はこう言った。
「プロのピッチャーは投げるのが商売だが、走るのも商売のうち。ランニングで足腰を鍛えるのも、プロのピッチャーの仕事の一部なんだぞ」
もちろん江夏に聞こえるように、だ。間接的に言ったことは、しっかり聞いている。その後、江夏は走り出した。
大阪球場のダグアウト裏には医務室があり、看護師さんが1人常駐していた。江夏は試合中、いつもそこで寝ていた。「何かあったら、呼びに来い」と若いピッチャーを使い走りに任命し、すやすや眠っている。
「お前、仕事場に来て寝るとはどういうことだ。なんで、そんなに眠いんだ」
直接聞いても答えない。人づてに聞いたところでは、毎日麻雀をしていたようだ。江夏は酒を一滴も飲まないから、徹夜で麻雀をし、それからグラウンドに来ていたらしい。
ある日、江夏夫人のお母さんが、わが家を訪ねてきた・・・
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