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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「野球人の“良縁”」

 

人を作り、人を育てる環境選びは重要だ


2000年の阪神新人選手の入団会見。赤星[前列右]がタテジマのユニフォームを着たのも、縁があったからこそだ[写真=BBM]



 プロ野球界は、今が人事往来の季節。人生は縁だ。どんな人と縁があるかで、その人の幸不幸が左右されることも往々にしてある。私はプロ入り時、南海というチームと縁があり、その南海も私を選んでくれた。大正解だった。

 中にはせっかく優れた力を持っていながら、間違った選択をしたがために芽が出ず、消えていった選手も数多くいると思う。環境が人を作り、人を育てる。自分という人間をよく分析し、どの環境に自分が合っているか判断するのは、アマチュア選手、関係者にはなかなか難しい。

 今年限りでの現役引退を発表した巨人野間口貴彦は、私がシダックス監督時代のエース。故障にも泣かされたが、プロ生活11年で通算13勝12敗に終わった。彼が自由獲得枠での巨人入団を希望したとき、私は大反対した。

「お前みたいなタイプは巨人には合わない。長いことプロで多くの選手を見てきた俺が言うんだから、信用せい」

 野間口は球が速いわけでもなく、“これ”という武器がなかった。社会人でも容易にノックアウトされてしまう。それがいきなり、プロで通用するはずがない。

「まだまだお前には足りないものがたくさんある。それが備わるまで待ってくれる球団を選べ」

 強いものにあこがれる気持ちはよく分かる。しかし、弱い球団に入団したほうが、チャンスはある。「己を知って、球団を選べ」と、私は自分自身の話をした。私も巨人ファンで、巨人に行きたかった。しかし当時、巨人には私の1級上に、甲子園で活躍した超高校級捕手の藤尾茂さんがいた。ましてやキャッチャーのポジションは、一つ。藤尾さんと争って勝つことができるだろうか。おそらく勝てないだろうと思った。ずいぶん迷ったし、いろいろ考えもした。そして南海と広島に絞り、テストを受けたのだ、と。

 正直、野間口は伝統ある巨人のドラフト1位というレベルではなかった・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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