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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「“ほめる“と“叱る”」

 

少し考え、話をすれば信頼を得られた時代


今年のセは巨人高橋由伸監督ら3人の新指揮官が誕生し、全員40代と若返った。彼らにも「ほめる」「叱る」ことには気を付けてもらいたい[写真=荒川ユウジ]



 人間が絶対勝てないものに、時代と年齢がある。今年はセ・リーグの監督の年齢が、全員40代と若返った。しかし、こういう時代だからこそ、監督業も余計難しいと思う。われわれが監督をやっていたころは、少し考えて選手にミーティングで話をすれば、比較的容易に信頼を得ることができた。しかし、今はそういった専門知識がほとんど出尽くして、野球の知識で信頼を得ることは不可能に近い。そう思うと、私は良い時代に監督をやった。

 60年この世界にいた中、精神野球、軍隊野球から始まり、メジャー・リーグの選手がどんどん入ってくるようになって、日本の野球は遅れているのだと自覚した、やはり野球は頭のスポーツだ、シンキング・ベースボールだ、と言われ、今は情報の質で信頼を得る時代になった。だから、これからの監督は大変だと思うのだ。

 野球とは、本当にやっかいなものだ。簡単に考えてもできるし、深く考えてもできる。要は自分がどちらの道を選ぶかだ。最も簡単なのは、精神野球。気合だ、根性だと言ってやれば間違いない。

 思えば南海・鶴岡(一人)監督は、外野に全員座らせてのお説教はあっても、筆記用具を持ってのミーティングなど一度もなかった。日本シリーズのときだけミーティングがあったが、すべてスコアラー任せ。しかし、それで鶴岡さんは結果を出したから、今なお“大監督”と呼ばれる。精神野球の時代に、鶴岡さんは合っていたのだろう。

 鶴岡さんのもう一つの特徴は、自軍の選手をケチョンケチョンにけなし、相手の選手をべた褒めすることだった。例えばマスコミ向けの談話にしても、「四番があれじゃ勝てねえや」「エースがあんなピッチングじゃあな」といったもの。私など「お前ら、よう見とけ。あれがプロや」と何度言われたことか・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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