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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「野球賭博」

 

歴史は繰り返される、『黒い霧事件』の記憶


 3月25日、セ・パが同時開幕した。しかし開幕前、ファンをワクワクさせるはずのフレッシュなニュースは、薬物、賭博、金銭授受問題で半減してしまった。不祥事にかかわった選手たちは皆、はっきり言ってバカだ。レベルが低過ぎる。やっていいこと、悪いことが分からない。子ども以下の判断力だ。

巨人の開幕戦前、満員の観客の前で謝罪を行った老川新オーナー/写真=桜井ひとし


 若い読者はご存じないだろうが、1969年から71年にかけ、『黒い霧事件』と呼ばれ、日本プロ野球界を揺るがす八百長事件が起こった。現役選手が公式戦で敗退行為を行い、関与した選手が永久追放処分を受けたのだ。まず発覚したのは西鉄・永易将之(投手)の八百長。暴力団関係者に現金を渡され、わざと試合に負けた。

 そこから芋づる式に、永易同様敗退行為を行った者、依頼され現金を受け取った者、これを断った者、あるいは別の八百長に関与した者など、次々新たな選手の名が挙がった。今回の巨人4投手のケースと事件の質は違うものの、このニュースを聞いたとき、「歴史は繰り返されるものだなあ」と思った。

 処分を受けた選手たちの供述によると、実は南海戦でも敗退行為が行われたらしい。私はその試合に出場していたはずなのだが、鈍いせいかまったく何も感じなかった。ただ、当時関与が取りざたされた近鉄のショートが、ファーストに大悪送球をしたのは覚えている。「なんだ、あれ」「アイツはスローイング音痴か」などとベンチで話していた。それほど、とんでもないところに送球していたのだ。のちにその疑惑について知って、「なるほど、そういうことか」と思ったものだ。

 しかし、よく考えてみれば、野球賭博を成功させようと思っても、なかなか難しい。監督まで抱き込まなければ、成功の可能性は低くなるからだ。例えばピッチャーなら「今日は調子が悪いな」と判断され、代えられてしまったらおしまい。結局、何試合か八百長を試みた中、成功したのはわずか1、2試合だったと言われている。

 われわれが現役時代のころ・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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