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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「監督育成」

 

大監督たちのオーラがまったく身に付かず……


「環境が人を育てる」――この言葉に倣い、現役時代から自分が訪れる場所は厳選していた、という話を以前書いた。例えば、気分転換に夜の街へ繰り出すとき。安物のバーに10回行くよりも、高級クラブに1回行くほうを選んだ。高級クラブに行けば、それ相応の人間が客層を成している。そういった人たちと何気ない世間話を交わしていく中にも、野球や人生のヒントはたくさん詰まっていた。

 何より大会社の社長ともなれば、醸し出す風格や風貌が圧倒的に違う。そばに座っているだけで、絶望的な距離感を覚えてしまうのだ。彼らに引き換え、私などそんな風格のカケラもない。どうしたらこんな雰囲気が身に付くのだろう、といつも思っていた。プロ野球の監督でいえば、巨人の川上(哲治)さんなど間違いなくそうだった。簡単に近寄れないし、声も掛けられなかった。

 結局20数年監督を務めても、私にはそういうものがさっぱり備わらなかった。素質がなかったのか、なんなのか。いまだに答えは出ない。もちろん川上さんにしたって、意識して貫録を出そうとしたわけではないはずだ。最高の地位に就き、そこに居続けると、自然に身に付くものなのだろう。「俺が監督だ」と意識して作った姿は、かえって部下に嫌われる。自然に出来上がった風格、風貌は本物だ。

巨人V9を成し遂げた川上監督。自然とオーラを身にまとった/写真=BBM


 その点、今はオーラのある監督がまったくいない・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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