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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「金田正一&江夏豊」

 

カネやんの口グセは「足で投げろ!」だった


下半身主導の投球を心がけていた前人未到の400勝投手、金田正一/写真=BBM


「大胆かつ繊細」という言葉がある。野球選手は――特にピッチャーに、そういう選手が多い。私と同時代を過ごした選手では、カネやん(金田正一=元国鉄ほか)、江夏(豊=元阪神ほか)が代表的だ。

 カネやんに「大胆かつ繊細」なる部分を最も感じたのは、彼のピッチングフォームだった。「足で投げろ」が彼の口グセ。監督になってからも、ベンチから大きな声でピッチャーに「足で投げろ!」とゲキを飛ばしていた。最初、それを聞いたとき、私にはその意味がはっきり分からなかった。「“足で投げろ”とは、どういうイメージなのだろう」。

 やがて、腑に落ちた。なるほど、“足を使え”ということなのだ。上半身は下半身の上についている。だから、上半身は気にするな。下半身さえ正しい動きをしていれば、それが自然と上半身に伝わっていくのである。“足で投げる”ために、カネやんは現役時代からよく走っていた。ブルペンで100球、200球とピッチング練習をする姿は見たことがない。常にランニングか遠投。確かにこれはどちらも正しい。遠投は、陸上のやり投げを想像してもらえば分かるだろう。足-腰-腕という順番で、全身を使ってやりを投げている。カネやんは、あのイメージでピッチングをしていたのだと思う。だから、“足を動かせば手が動く”というわけだ。

 そんなカネやんの練習に付き合わされる若手は大変だった。カネやんは団体で、つまりチーム全員で動くのが嫌い、人に指示されるのが嫌い。自由にやらせてくれ、というタイプ。そこで首脳陣は・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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