週刊ベースボールONLINE

野村克也の本格野球論

野村克也が語る「阪神タイガース」

 

最終回、無死一塁からの強行策は“強気の勘違い”


 セ・リーグは広島が2位・巨人に10ゲーム差をつけ、ペナントレースを折り返した。一方、5位に沈んでいるのは阪神。阪神のそんなチーム状況もさもありなん、と思わせるシーンが前半戦終盤にあった。

 7月5日の巨人戦[東京ドーム]。2対3と1点のビハインドで迎えた9回表、阪神の攻撃だった。この回先頭の江越大賀が四球を選び、出塁。もう後がない、最終回の攻撃である。まずは同点を狙いにいかなければならない。そこへおあつらえ向きに四球をもらい、無死から同点のランナーが出たわけだ。「よし、バントだ」と私は思った。

 ところが次打者・北條史也はバントもせず、強行策に打って出て、空振りの三振。同点のランナーは、一塁にクギ付けのままだった。結局2者連続三振後の二死から、原口文仁がレフト前ヒットで出て一、二塁としたが、反撃もそこまで。阪神は1点差でゲームを落としてしまった。

 あれは、悔いを残す負け方だ。負けるにしても、負け方というものがある。翌日に、あるいは翌年につながる負け方だ。しかし、1点ビハインドの9回無死一塁で強行策を取った金本知憲監督の作戦は、私には分からない。

 それこそ強気の勘違い、と私は思うのだ。野球はセオリーに基づき、そこにいかに奇策を組み込んでいくか。つまり・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野村克也の本格野球論

野村克也の本格野球論

勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング