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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「監督業&ドラフト」

 

心身ともに労苦を伴う監督業


93年にドラフト1位で入団した伊藤は同年、7勝をマークして優勝に貢献した/写真=BBM


 西武辻発彦監督が誕生。先週からユニフォーム姿に身を包み、秋季練習の指揮を執っている。

 辻は1995年の秋、西武を自由契約となり、私が監督を務めていたヤクルトへ入団した。私はかねてから、「日本プロ野球界におけるセカンドのベストナイン」と彼の守備を評価していたのだが、そのとおり、当時若手だった宮本慎也らの手本になった。打撃面でも移籍1年目の96年、自己最高打率となる.333を記録した。

 ただ正直、プレー以外では印象の薄い選手。監督としての器があるかどうかは、実際やらせてみなければ分からない。しかし、監督の人材難というプロ野球界の現状を考えれば、こうして次々新しい監督が生まれるのはいいことだ。なんといっても、「器が人を作る」という言葉があるではないか。

 私も気を付けなければいけないと思う。三原脩さん、水原茂さん、鶴岡一人さんという三大監督を見て学び、川上哲治さん率いる巨人と日本シリーズを戦った。目が肥えているぶん、今の監督は皆、頼りなく映ってしまう。そこは目線を下げて見なければいけない。「キャッチャーは監督の分身」、つまりキャッチャーは試合中に監督の仕事の一部を担っている。それがキャッチャー業の醍醐味でもある。では監督業とキャッチャー業、どちらが面白いかと言われれば、そりゃあキャッチャーのほうが面白い。当然だ。キャッチャーとしての責任だけなのだから、楽しいものだ。

 しかし、監督ともなれば、その一挙手一投足がチーム全体に影響を及ぼす。チーム全体に責任があるから、監督の仕事は心身ともに労苦を伴う。「組織はリーダーの力量以上に伸びない」と言われていることは、このページでも再三、書いた。とはいえ・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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