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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「球界への提言」

 

野球界停滞の一因は監督の人材難


ヤクルト監督時代の野村氏。現在の監督、選手にも“本物の野球”を追求してもらいたい/写真=BBM


 いよいよ2016年最後の発売号。とはいえ月号は2017年1月初旬、中旬の合併号になるということなので、まずは「明けましておめでとうございます」とご挨拶しておこう。毎年この時期、記者や編集者に聞かれるのは、「年末年始の過ごし方」である。私はとにかく出不精で、年末年始はいわゆる“寝正月”を決め込む。年末の紅白歌合戦ぐらいは見るが、年始は初詣も何もなし。野村家の正月恒例行事といったものも、特にない。ついでに言うと、好きなおせち料理もこれといってない。昔は女房に連れられて(?)海外旅行にも出かけたが、今は国内旅行もする気にならないな。

 私の年末年始はさておき、新年号にあたり「2017年プロ野球界への提言を」と編集者から依頼された。一つ声高に問いたいのは、プロ野球界ほど何もしない組織はほかにないのではないか、ということだ。私もこの世界に身を置き、60年超。しかし、これほど変化、進化しない世界がほかにあるのだろうか、と首をかしげたくなる。ファンの皆さんにも、もう少し厳しくなってもらわなければいけないのではないか。

 それでもお客さんが来ればよい、と利益ばかりを追求し、果たして本当に“良い野球”――“本物の野球”を提供する姿勢があるのか。はなはだ疑問である。プロ野球が変化、進化しない原因の一つは、監督の人材難だ。私の見立てで「これは良い監督になりそうだ」と思う人材は、宮本慎也(元ヤクルト)くらい。なんといっても、彼は野球をよく知っている。なのに、なぜ引く手あまたではないのかというと、私に似て処世術がゼロなのだ。加えて彼は小柄なためか、どうしても存在感に欠けてしまう。人の上に立つ人間には、ある程度の体格も備わっていたほうがいい。そこから醸し出されるオーラ、風格も指導者に必要な条件といえる。

 各球団のオーナー、社長のためにも、これはぜひ大きな文字にしてほしい。今は能力より、処世術の時代。処世術に長け、明るく感じの良い人間が、監督のイスを得る。私のように暗い、重い人間は、今の時代においてはどこからも声がかからなかっただろう。思えば・・・

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野村克也の本格野球論

野村克也の本格野球論

勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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