週刊ベースボールONLINE

野村克也の本格野球論

野村克也が語る「お金」

 

「金8万4000円也」に大喜びもつかの間……


プロ2年目の筆者。若かりしころは、年俸も当然まだ低かった/写真=BBM


 2号ほど前の本誌で、「球界マネー事情」なる特集をしていた。あれを見て、私が南海にテスト入団した当時のことを思い出した。

「自分が働ける球団」のテストを受けようと、選手名鑑と首っ引きで30代のレギュラー捕手がいる球団を探した私。結果、南海と広島が候補に挙がった。あのころの南海は、無名選手を育てることに定評があった。まさに私向きである。まず南海のテストを受け、ダメなら広島、それもダメなら社会人野球の道へ進もうと思った。まさか最初の南海に受かるとは思ってもみなかった。

 三百数十人テストを受けた中、合格者は7人。その中になぜかキャッチャーが4人もいた。おかしなテストだなと思ったが、合格ならなんでもよかった。そして、いよいよ契約だ。「1人ずつ入ってこい」と言われ、「契約金はいくらぐらいくれるのかな」とドキドキしながら待った。

 さて私の番が来て部屋に入ると、すでに書類がテーブルの上にポンッと置いてある。「これが契約書だ」と言われたものの、どうせ読んだって分かりゃしない。金額のことで頭がいっぱいで、数字だけを目で追った。すると、文章の最後に「金8万4000円也」と書いてあるではないか。

 おおっ、さすがプロだ。私はうれしくなった。大卒初任給が5500円前後の時代。そんなに給料がもらえるとは思ってもいなかった。そこで、肝心かなめの質問をした。

「すいません、一つ聞いていいですか・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

野村克也の本格野球論

野村克也の本格野球論

勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング