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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「二塁手」

 

WBCで光った菊池の守備力


 今週号の本誌は「二塁手特集」だと聞いた。本稿執筆時点でまだ次号予告も見ていないのだが、菊池涼介(広島)あたりが巻頭か。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での菊池は、侍ジャパンのピンチを大いに救った。なんといっても、守備位置がいい。よく考えて守っている。守備の際、常にキャッチャーのサインを見て、球種によって守備位置を決めているのだろう。打球に対するスタートも、予測済みなら当然良くなる。内野手がああいうプレーをしてくれると、バッテリーは非常に助かるものだ。2次ラウンドのオランダ戦、ダイビングキャッチに続くグラブトスも素晴らしかった。

 ただ一つ気にくわないのは、彼のヒゲ。“らしく生きる”ことを実践してほしいのだ。今、どの世界でも“らしさ”が欠けている。総理大臣から何から、皆そうだ。吉田茂、田中角栄といった歴代の首相には日本国のリーダー“らしさ”があった。安倍晋三氏では、いかにも弱い。単なるいいとこの坊ちゃんだ。何かやってくれるだろうという期待感も失われてしまう。一国のリーダーがあれだから、プロ野球界に至ってもリーダーがいなくなってしまったのだろうか。それとも私の目が肥え過ぎてしまったためか。

 余談が過ぎた。話を二塁手に戻そう。私の野球観を変えてくれた人物として、以前この連載でも紹介した元南海のブレイザー(ドン・ブラッシンゲーム)。彼もうまい二塁手だった。

 1967年、南海に入団したときは35歳。177センチと小柄ながら、メジャー・リーグで10年ほどレギュラーを張ったという。「これは何かあるな」と思い、遠征先で毎晩のように彼と食事をしながら、メジャー時代の話を聞いた。メジャーといえば、体の大きな選手がパワーとスピードだけで野球をやっているイメージを持っていた。ところがブレイザーと話していくうち、メジャー・リーガーがいかに細事、小事を考えながら、ち密な野球をしているのかが分かってきた。

 しかし、最初に驚いたのは試合前、ブレイザーが私のところに来たときだった。「今日のピッチャーとの・・・

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野村克也の本格野球論

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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