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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「選手指導法&平常心とは?」

 

選手は千差万別。だから、指導することは難しい/写真=BBM


「名選手は名監督ならず」これには理由がある


 本号が出るころには、各チームの春季キャンプも打ち上げ。オープン戦もたけなわになっているだろう。

 この時期にいつも考えるのは、選手の可能性をいかに伸ばしていくか、その指導法である。

 正直、これは永遠に分からない。なぜなら選手個々、性格も、持てる力も、すべてにおいて違いがあるためだ。Aという選手にうまくいったからといって、同じコーチが同じやり方でBという選手に教えたからといってうまくいくとは限らない。まさにこれも『敵を知り、己を知る』なのである。

 よく「褒めて伸ばすか、叱って伸ばすか」と言うが、「褒める」も「叱る」も、裏返せば愛情。自分のエゴを出したり、その時々の感情で動いたりしてはいけない。自分は本当に、その選手のことを思って言っているのか、それとも自分の気分次第なのか。そこは指導者も常に振り返り、反省材料としておきたい。そうでなければ、迷惑するのはその選手とチームなのだから。つくづく、人の上に立つのは難しい。

「名選手は名監督(コーチ)ならず」というのには、理由がある。強烈な成功経験を持っている、あるいは天才型の選手は、自分の成功経験に基づいて、すべての選手を指導してしまうためだ。そして、つい「プロのくせに、こんなこともできないのか」と思ってしまう。

 しかし、人は可能性の生き物である。その発達の仕方も、ある程度まで伸びて止まってしまうタイプ、しばらく平行線で頑張り続け、あるとき一気に伸びるタイプ、ちょっと見では分からないほど静かに、ゆっくり伸びていくタイプ、と3つのタイプに分かれている。

 指導者は、選手がどのタイプかをしっかり見極め、的確な指導を与えなければならない。何はともあれ、人に押し付ける前に、まず自分だ。

 しかしまあ、振り返ってみれば、私も・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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