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野村克也の本格野球論

野村克也が語る「四番・岡本和真」

 

岡本は四番で使い続けるべきだ/写真=桜井ひとし


不朽の名言はタメができれば……


 7月、打率.256、2本塁打、9打点と下降気味だった巨人岡本和真が、8月は打率.301、9本塁打、26打点とよみがえった。

 岡本は夏場でも食欲が落ちず、疲れ知らずの体質らしい。人が数字を落とすときに、上げてくる。これは成績を残す選手の特長だ。

 先日、岡本のバッティングを見たが、軸足側にタメた力を左足のカベにぶつけるイメージがしっかりできていた。

 われわれの時代の先輩たちは、よく言ったものだ。

「タメができれば、カネが貯まるぞ」

 これは、今なお名言だと思う。

 タメとカベは、爆発的な力をバットに伝えるために、必要なものだ。バッターはインパクトの瞬間に、最大級の力をボールに与えようとする。そのインパクトの直前、ほんの一瞬ブレーキがかかり、次の瞬間に爆発的な力が発揮される。その一瞬のブレーキをかけるための“力の支点”が、カベということだ。

 前足をステップし終えた瞬間=トップの状態を作るとき、岡本のような右バッターの場合は、左半身を意識してカベを作る。「カベが崩れない」=「理想的なトップの形がつくれている」という解釈でいい。

 一方、タメは軸足のヒザが開かない、頭がピッチャー側に倒れない、などカベが崩れないよう我慢することが重要となる。

「タメができれば、カネが貯まるぞ」とは、カベを作ることでスイング動作の中に一瞬のタメができ、バットのヘッドが走ってインパクトの瞬間、ボールに強い力が加わるということだ。

 岡本は7月、少々バットが遠回りすることもあったようだが、8月にはそれが改善された。

 岡本は巨人軍第89代の四番バッターなのだそうだ。そんな数字を数えている球団は、巨人ぐらいのものだろう。私は自分が南海の第何代か、聞いたこともない。

 人の顔のことを言えた義理ではないが、岡本も四番とは思えないような・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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