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野村克也の本格野球論

野村克也が語る“2019年プロ野球”「2020年も“本物の野球を”とことん求めていきたい」

 

2019年、日本シリーズは巨人の4連敗で終わった/写真=高塩隆


シリーズでは「恥ずかしい采配」だけはしたくなかった


 この原稿が、2019年最後の発売号になるそうだ。

 19年を振り返ると、何があったかな。日本シリーズ後も11月中旬過ぎまで侍ジャパンがプレミア12を戦い、宿敵・韓国を下して優勝。プロ野球ファンにとっては、長くも楽しいシーズンだっただろう。

 日本シリーズでは、巨人がソフトバンクに4連敗。いやはや、私も何度か監督として日本シリーズに出場したが、いつも「恥ずかしい采配だけはしたくない」と思っていた。

 特にそれを意識したのは1973年、巨人との日本シリーズだ。相手はONを擁し、前年までV8を成し遂げている巨人である。前回対戦時は鶴岡(鶴岡一人)さんが監督時代の66年。そのときは2勝4敗で負け、V2を許してしまった。

 実は73年の巨人、ペナントレース中に長嶋茂雄が右手薬指を骨折し、シリーズには出場していない。Nを欠いた片肺飛行ではあったが、そんなことは、この時期の巨人には関係なかった。

 初戦必勝で、強心臓のエース・江本孟紀を立てた。この試合は4対3でなんとか逃げ切り。しかし、そこから南海は4連敗し、あっさりV9を達成させてしまった。

 いかんせん、実力が違い過ぎたのである。この年からパ・リーグで前後期制が始まり、前期優勝したわれわれが、後期優勝の阪急をプレーオフで倒しての日本シリーズ進出だった。パ・リーグ代表とはいえシーズントータルでいえば、リーグ3位。その程度の実力しかない南海が、天下の川上巨人に勝てるとは、誰も思っていなかっただろう。

 問題は、選手もそう思っていたことだ。私がいくら「野球は意外性のスポーツだ」と言っても、選手は納得しなかった。巨人に勝てるはずがないと思い込んでいた。その意識を変えられないまま日本シリーズに突入したのは失敗だった。

 選手の意識自体を変えられなければ、あのときの巨人には何をしたって勝てなかっただろう。

 まあ、19年の巨人もパ・リーグの2位だったソフトバンクに4連敗するとは、情けない。情けないというより・・・

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勝負と人間洞察に長けた名将・野村克也の連載コラム。独自の視点から球界への提言を語る。

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