一瞬の迷いも許されない。ただ、時として“戻る勇気”も必要だ。共通するのは瞬時に決断を下すこと。俊足ならば盗塁を決められるとは限らない。初タイトルは日々の“覚悟”の結晶だ。 取材・構成=鶴田成秀 写真=内田孝治 自分を知ること
連戦をこなす中で疲労は避けられない。だから、常に同じ判断を下しても、結果が同じとは限らない。「走らない勇気と決断」も、確かな一つの覚悟だ。50メートル走5秒8を誇るスピードスターの矜恃(きょうじ)は興味深い。 ──タイトル獲得の要因を自己分析すれば、どんな答えになりますか。
高部 試合前、特に3連戦などカード初めに、相手のクセであったり、スタートの確認だったり、走るための『準備』をできたことだと思います。だから、準備の賜物なのかなとも思うんです。準備の大事さがより分かったシーズンでしたし、準備してきたからこそ、一つひとつ盗塁を積み重ねることができたと思います。
──積み上げた盗塁は44。シーズン中、「目標は40(盗塁)」とも言っていましたが、この数字に満足は。
高部 よく44も決められたなと思う部分もありますけど、「ここは走れたな」というケースもありました。目標にはしていましたけど、超えてからは50したい気持ちも出ていたんですよね。でも、届かなかったので。もっと数字を積み上げていきたいし、もっと増やしていけるとも思う。
──「足にスランプはない」という意見もありますが、『準備』を大事にした中で、スランプを感じたことはありましたか。
高部 ありますよ。スランプというか、毎日、足や体の状態は違うので。走れるときは走れるし、走れない日は走れない。グラウンドが人工芝か土かでも変わってきますし。体の状態も含めて環境は毎日違う。スランプというより、調子の波はあると思うし、だからこそ体の状態を知るという意味でも準備が大事なんです。
──自分を知るためにも、と。
高部 はい。その上でスタートを切るのかどうか。体の状態を知っておく中で「いけると感じるのかどうか」。自分の体を一番知っているのは自分。このタイミングだと「今日の状態では無理だ」というのが分かるんです。
──同じ質問を
西武・
松井稼頭央監督の現役時代にした際「スランプはある」と答え「走っているときの風の感じ方が違う」と言っていました。
高部 それ、すごく分かります。確かにそれはあります。僕の感覚だと、速く走れているときって、風の音しか聞こえていないんですよ。走れていないときって、ほかの音も聞こえてくる。風の音ではない何かも耳が拾っているんです。そういう感じなんですよね。だから・・・
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