週刊ベースボールONLINE

惜別球人2015
引退の平野恵一に聞く「色んなことが詰まった14年間」

 

試合展開に関わらず、何度この男のプレーに魅了されたことだろうか。代名詞となったヘッドスライディングに、左右の打球へ果敢にダイブする守備――。その姿でチームを鼓舞し、幾度もナインを活気づけた。だが今季、故障に悩まされると、9月19日に引退を表明。来季は二軍守備走塁コーチとして再び阪神のユニフォームに袖を通すが、今、じっくりとオリックス、阪神で計14年間プレーした現役生活を振りかえる。
取材・文=岡部充代、写真=松村真行、BBM

ライバルは己の体。満身創痍の14年間


 身長169センチ、体重67キロ。小さな体にムチを打って、14年間のプロ生活を駆け抜けてきた。その間、仕えた監督は実に11人。指揮官が代わるたびに自分に求められる役割、やるべきことを見極めて、オリックスと阪神の2球団でレギュラーを張った。「頑張ってくれた体をそろそろ許してあげようかな」。引退会見で語ったこの言葉に、平野恵一という選手がどのようなプレースタイルを貫いてきたかが凝縮されている。

――9月25日の引退会見から1カ月余り。すぐにユニフォームを着ることになりましたね(阪神のファーム守備走塁コーチ就任)。

平野 そういうことは考えていなかったんですけど、金本(知憲)監督の言うことは絶対なので(笑)。

――引退会見では、すがすがしい表情に見えました。気持ちの区切りがついていたからでしょうか。

平野 そうですね。野球を始めてから、ああいうすっきりした気分というのは初めてかなと。次の日の不安やプレッシャーが一切なかったので。

――そういうものから解放された気分は?

平野 最高ですね(笑)。朝が違う。めちゃめちゃラクです。痛いところもないですし。

――引退を考えるようになったのはいつごろですか。

平野 ケガした時点でいつも考えていました。ダメだったら辞めると決めていたので。ただ、今回はケガが長引いて……。

――最後の一軍戦は5月20日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)でした。

平野 治ったかなと思ったら次のところをまた痛めて。足も何カ所もケガしてしまいました。本来の自分の動きができない。1年間を通して仕事ができない。今年はそういうのと常に向き合いながらでしたね。

今年5月20日、ソフトバンク戦の第3打席は四球を選んで出塁。これが14年間の現役最終打席となった



――何度もケガを克服してきた平野選手ですが、これまでとはプレーへの影響度が違ったのでしょうか。

平野 実は2月から右足のかかとを痛めていて、何とか5月まで粘ることができたんですけど、かかとが動ける状態になってきたら、今度はヒザ、内転筋、股関節、ふくらはぎと、次々とケガをしてしまったので。二軍戦に出たとき、「元気だ」とか「いい動きだ」と言っていただけたんですけど、自分の中では本来の自分の動きができない、結果を出す動きができない、勝負できる体ではないと判断して、こういう決断に至りました。これ以上ムチを打っても、ギアは上がらないという感覚ですね。

――自分が思っているプレーができないのなら、プロとしてグラウンドに立つべきではないと?

平野 本当に厳しい世界、結果がすべての世界なので。自分に求められているのは、1年間いろんな仕事をしてほしい、チームを助けてほしい、そういうポジションだと思っていましたから、それができないっていう判断です。

――今年ほど引退を考えたシーズンはなかった?

平野 そんなことはないですよ。毎年、考えていました。ライバルは誰かと聞かれると、自分ですと答えてきたので。全力プレーができなくなったら辞めると言ってきましたし。

――自分の体がライバルだった?

平野 そうですね。人を見ると競争してしまうので。なぜこんなにすごい選手たちがいる中で、首脳陣の方々が自分を使ってくれるのかというのを常に考えて、人が何て言おうと、自分は違うんだと。まず何を求められているか、何をしなきゃいけないかを見極めるのが大変でしたね、毎年毎年。監督もたくさん代わったし(14年間で11人)。これはすごく難しいことなんですよ、実は。毎年のように監督が代わる中でレギュラーを取り続けるのは、なかなか難しい。

――イチから信頼を勝ち取らないといけないですからね。

平野 そうです。いい経験でしたけどね。

――引退会見での「頑張ってくれた体をそろそろ許してあげようかなと思った」という言葉が印象的でした。それだけしんどかったということでしょうか。

平野 本当にすごい選手がたくさんいる、自分のような体では100%でも勝てない世界にいたと思っています・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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