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惜別球人2021

雄平 引退惜別インタビュー 2つのポジションで手にした財産 「投手のときはすごく苦しかったので、投げる、打つ、守るの3つがすごく新鮮で楽しかった」

 

高校生最注目左腕としてドラフト1位でヤクルトに入団するも、投手としては伸び悩んだ。転機となったのは野手への転向だ。小さな体を鍛え上げ、ベストナイン獲得、リーグ優勝を決める劇的なサヨナラ打も放った左打者。19年間という長きプロ野球人生を振り返る。
取材・構成=阿部ちはる 写真=高原由佳、BBM

引退試合となった11月1日の広島戦[神宮]で通算882本目の安打をマーク。引退セレモニー後には仲間の手で宙に舞った


2度の引退試合と込み上げる感謝の思い


 チームメートからもファンからも愛された男だった。それは引退試合が二度行われたことからも伝わってくる。一度目は9月30日に二軍の戸田球場(楽天戦)で、二度目は11月1日の神宮球場だった。優勝争いを繰り広げていたヤクルトの順位が確定していれば、神宮最終戦で引退試合ができるという状況で、見事にチームはリーグ優勝を果たし、背番号41の花道を飾った。そしてベテランエースが見せた粋な計らいは、雄平が愛されていた何よりの証しだろう。

──19年間、お疲れ様でした。2021年11月1日には神宮球場で引退試合が行われました。

雄平 すごく緊張しました。本当にラスト1回、一軍でプレーできたらいいな、という思いでいましたから。選手のみんなが勝ってくれなかったら神宮の最終戦で試合ができることはなかったのですごくうれしかったですし、最後に神宮でプレーできたというのは本当によかったです。

──最終打席は左前打。ライトの守備にも就きました。

雄平 最後も真剣勝負で終わりたかったので、気を使ってくれていたとは思いますが、森浦大輔投手(広島)にも感謝をしています。そしてやはり一番はファンの皆さんに最後、プレーしているところを見せられたらいいなという気持ちで臨んでいましたので、今まで応援してくださった方々、球団の人、いろんな人に最後の姿を見せることができて本当によかったです。

──石川雅規投手の救援登板もとても印象的でした。先発としての連続試合出場が続いていた中でしたから。

雄平 石川さんが「6回投げるわ」って言っていて、先発記録が続いているとは知らずに「お願いします!」と。普通にね、行く前にハイタッチしてくれて。のちのち知ったんですよね……。僕なんかで記録が途絶えてしまったので……。ただ本当に今まで石川さんの背中を追って19年間やってきましたし、最後にそういう形で、素晴らしい先輩の姿、粋な姿を見せていただき感謝しかないなと思います。

──あらためてになりますが、引退を決断した時期と理由を教えてください。

雄平 昨年の9月中に引退を決めました。もう少しやりたいなという気持ちもあったのですが、昨シーズンは一度も一軍に上がれませんでしたから。(ケガから復帰した)一昨年も43試合に出場しましたが、なかなかチームに貢献できなかったので。やはりプロとして一軍でプレーできないというのはそういうことなのかなと思いました。もう1年、もう1年と野球をやることは楽しいのですが、プロとしてはちょっと厳しいのかなと思い決断しました。

──「まだやれる、まだやりたいと思える中で引退できるというのも幸せなことなのかな」と引退会見で話していました。

雄平 まだできるという気持ちもあるのですが、現実はそうじゃない成績で……。あとはその悔しい気持ちなどが次のステージへの活力にもなるなという気持ちもあったので。完全燃焼しちゃうとなかなか次へのパワーがみなぎってこないのかなと思って。今後、コーチとしてやる上で、そういう悔しい気持ちをエネルギーにして頑張っていきたいなと思っています。

どん底からの野手転向すべての経験が財産に


 03年、剛球左腕としてヤクルトに入団すると、1年目のキャンプから一軍に帯同し、4月22日の巨人戦(東京ドーム)でプロ初登板を果たしている。だが華々しいデビュー以降は結果を残せずにいた。そのときに感じていたのは“投げること"への苦しみ。野手転向はもう一度、雄平に「ワクワク感」を与えた。

───プロ野球生活は投手としてスタートしました。剛球左腕としてドラフト1位で入団した当時を振り返ってください。

雄平 高卒で入団しただけに20歳くらい年上の人とも野球をやるということにすごく衝撃を受けました。さらにそのころのヤクルトの先輩には古田(古田敦也)さん、宮本(宮本慎也)さんなど黄金期の本当にすごい選手、テレビで見ていた有名な選手ばかりいました。その中で1年目から一軍で使っていただき・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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