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惜別球人2022

西武・十亀剣 引退惜別インタビュー チームの勝利を心底願う男「自分を客観的に見ていったことがプロに入れた要因の一つだと思います」

 

2012年、JR東日本からドラフト1位で西武に入団した十亀剣。先発、リリーフにとチームのために懸命に腕を振ってきた。己に妥協せずに歩んできた野球人生。35歳になる今年、ピリオドを打った。
取材=中島大輔 写真=BBM


あっという間の11年


 スリークオーターとサイドスローの中間のような独特な投球フォームから力強い速球を軸に、先発、中継ぎ、抑えとしてライオンズ投手陣で11年間活躍した。入団時の監督で、FA権を取得した2019年オフに交渉にあたった渡辺久信GMが「男気」と表したように、十亀剣はチームの勝利を心底願う男だった。

──プロ野球という舞台で11年間過ごし、どんな世界だと感じましたか。

十亀 たぶん皆さんが思っているより、1年が過ぎるのは早くて。あれをやろう、これをやろうと思っている間に1年が終わってしまって、シーズンオフに悔いが残って練習する選手が多いと思います。11年はあっという間でした。時間の経過を早く感じていた分、振り返ると記憶に薄い部分も意外と多くて。何か、不思議でした。野球を一番根本から考えた時間だったと思います。

──社会人は仕事、学生は授業がある。

十亀 プロ野球選手は1日中、1年中、野球のためにどうしたらいいかを考えないといけなくて。昔から冬の長期の休みがあったときに、スキーやスノボをやるのもダメだと言われて今まで来て。「自分の楽しみのためにケガしたら、お前は野球選手としてはどうなの?」ってすごく考えた1年が積み重なった、11年だったと思います。(気持ちが)休まる日がなかなかなくて、そういう日々から解放された今、はたから野球を見られている気がします。先日CS(クライマックスシリーズ)を見に行ったんですよ。

──福岡でのソフトバンク戦ですね。

十亀 PayPayドームの三塁側の真ん中くらいで見ていました(笑)。現場も知っているので、今はこういう考えでこういうプレーをしているんだろうなとか、また新しい発見があって。プロ野球に入ったからこそ気づけることと、野球をしているだけでは気づかないことがあるなと感じました。

──11年間を振り返り、プロ野球選手になって一番良かったことは?

十亀 ふざけていいですか?

──じゃあ、両方お願いします。

十亀 ふざけた答えは、野球ゲームで自分の名前があることです。僕は名前が特殊なんですよ。だから「パワプロ」(実況パワフルプロ野球)で一生懸命選手を作って「十亀」と付けると、アナウンスが昔の電子音みたいな響きになる。過去に「十亀」という選手がいなかったのかな。それが一番うれしかったですね。

──では、本題を(笑)。

十亀 数カ月前にドラフト候補の記事を読んでいたら、小さいころに西武ドーム(現ベルーナドーム)で僕が先発している試合を見て野球を好きになったという大学生の候補選手がいたんです。誰かの人生のきっかけになれたことは一番うれしかったですね。

──野球をしていて、なんとなくでもプロになりたいと思っている子は多いと思います。目指したほうがいい世界ですか。

十亀 やるからには目指したほうがいい。目指したからこそ見える、自分の立ち位置があると思います。僕も小中のころは、野球をやっているならプロを目指すものという雰囲気の中でやっていて・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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