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惜別球人2022

楽天・福山博之 引退惜別インタビュー 誰かのために「やってやったぞ、と。リハビリを手伝ってくれた人たちのために頑張ってよかった」

 

縁の下の力持ちだった。あらゆる状況でマウンドに上がった鉄腕は、ケガとの闘いを経験しながらも、地道なリハビリを経て第一線へ復帰。その根底には、「誰かのために」という強い思いがあった。
取材・構成=阿部ちはる 写真=井沢雄一郎、BBM


野手転向を断り戦力外に


 プロ2年目での戦力外、手術、育成契約……。楽天のブルペンを支えた福山博之のプロ野球人生は、あまりに激動だった。だが悲壮感はまったくなく、いつも笑顔で輪の中心にいる。チームのピンチでマウンドに上がり、気迫あふれるピッチングで状況を落ち着かせ、マウンドを降りればみんなを笑顔にする。チームからもファンからも愛された“サブちゃん”の12年間を振り返る。

──現役生活お疲れさまでした。最初にご家族に話したときはどういった反応だったのでしょうか。

福山 息子に『パパ、野球やめるわ』って言ったら『それやったら家で一緒に(野球)やったらええやん』って。楽天でまたお仕事するよと伝えたら、『それやったらええわ』と言っていたので。結構あっさりしていましたね(笑)。

──そうだったのですね(笑)。あらためて引退を決断した理由を教えてください。

福山 時期は、10月10日くらいですかね。球団から戦力外と言われてから10日間くらいは迷っていました。現役を続けたいなという気持ちもあったのですが、球団の方からはセカンドキャリアについての話もいただいていたので、そこも含めて考えていましたね。僕はどちらかと言えば戦力外から拾ってもらった身なので、少しでも、どんな形でもいいのでまた楽天イーグルスに恩返しがしたいなという気持ちがちょっとずつ出てきたので、その気持ちが出てきたら今しかないなと思って引退することを決めました。

──引退セレモニーは福山さんらしい笑顔あふれる時間となりました。

福山 引退セレモニーって結構涙するんかなと思ったんですけど、なんか、そんな場面もなく(笑)。笑顔で終われてよかったと思います。

──引退セレモニーの際には横浜、楽天でともにプレーした藤田一也選手(現DeNA)からもメッセージがあり、2013年の優勝時に「楽天イーグルスに来て頑張ってきてよかったなと話していました」というコメントもありました。楽天への移籍が大きな転機になったと思います。

福山 12年に球団から野手転向の話をされました。ですが僕には打てる自信がなかったんです。野手をやればもう1年、野球選手としてできるのですが、野手に転向して1年でクビになるんやったら、早めにクビを切ってもらって、もしチャンスがどこかであれば、ピッチャーで勝負したいなという気持ちがあったので、野手転向の話を断りました。ほかの球団から声が掛からなかったらもうスパッとやめようと思っていましたから、博打(ばくち)に出たと言いますか一か八かの賭けに出て、結果的にそれがいい方向に行ったなと思います。

──投手への強いこだわりがあったわけではなかったのでしょうか。

福山 いや、そういうのは全然なくて。ただ単に打てる自信がなくて、どちらかと言えばまだピッチャーのほうが勝負できるんじゃないかという気持ちが強かったんですよね。

──楽天から声が掛かったときはホッとしたという思いでしょうか。

福山 なんて言うんですかね。ドラフトにかかったときよりも・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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