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惜別球人2023

福田永将(元中日) 引退惜別インタビュー 貫いたフルスイング「これは無理だというスタートからだったので、17年間もできて、本当に驚いています」

 

美しい放物線を描く打球でファンを魅了した。快打後のバット投げが代名詞、一発長打が魅力の長距離砲。常に故障に悩まされた現役生活でもあったが、ひたむきに練習し、バットを黙々と振り続けてきた。ドラゴンズ一筋17年の背番号55が現役生活に別れを告げた。
取材・構成=牧野正 写真=宮原和也、BBM

「自分なりに頑張ってきました。悔いはありません」。引退セレモニーでは、こらえきれずに涙を流した


現役に未練なし


 今年が最後のシーズンになる予感はあった。1月の自主トレで左膝を負傷して手術を受けた。復帰できたとしても、以前のような打撃を取り戻すことは難しい。ここ数年は納得のいく成績を残せず、7月で35歳になる年齢と世代交代を推し進めるチーム状況を考えれば、覚悟はできていた。だから球団からの戦力外通告にも驚きはなかった。現役を続ける気持ちはなく、ドラゴンズで引退することを決めた。

――現役生活17年、本当にお疲れさまでした。いつもと違うオフ(取材は12月上旬)ではありませんか。

福田 だいぶ違います。気持ちの面ですよね。現役のときはオフと言っても、体は動かしておかないと、とか、バッティングのこともずっと考えていたのですが、今はそこまで考えなくてもいいというか、そういうプレッシャーはないですから。

――新しく二軍打撃コーチに就任し、すぐに秋季練習がスタートしましたが、いかがでしたか。

福田 最初は不安でした。選手との距離感がどうなるのかなと考えたり、練習の流れも分からなかったですから。あらためて首脳陣というのは、いろいろと選手のことを考えてやってくれていたんだなと(笑)。選手のときは基本、自分のことしか考えていませんでしたから。

――引退を決断した経緯、思いを聞かせてください。

福田 もちろん球団から言われましたが、言われるだろうなとは思っていました。ですから球団から連絡があったときは「来たか」という感じでしたね。1月の自主トレで左膝をやってしまって、そのまま春季キャンプには入ったんですが、さすがにそれは無理でした(キャンプを途中で切り上げて左膝内側半月板を手術)。まったく同じところを、今度は左ですから(2021年10月に右膝半月板を手術)。シーズン途中で復帰はできるかもしれない。でも良いパフォーマンスはおそらく出せないだろうと覚悟はしていて、実際にそうでしたから。

――まだ続けたいと、現役続行への迷いはありませんでしたか。

福田 それはまったくなかったですね。奥さん、両親と相談はしましたけど、自分の中ではもう無理だと思っていましたから。

――悔いはありませんか。

福田 細かいことを言ったら無限にありますけど、長い目で見れば、よくやれたなと思います。これほど長くプロでできるとは思っていなかったですから。

――引退セレモニー(10月3日の巨人戦/バンテリン)は盛大でした。最後の打席も初球を福田さんらしいフルスイングでした。

福田 フルスイングというより……詰まり過ぎて(遊飛)、逆に悔しくも何ともなかったというか。こんなバッティングをしていたら、それは終わりだなと(笑)。

――福田さんをはじめ、谷元圭介さん、大野奨太さん、そして同級生の堂上直倫さんと一気に4人も引退となりました。

福田 先輩2人に直倫と、3人とも本当によく練習する選手だったので、それに刺激されて自分も練習できたし・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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