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惜別球人2023

正田樹(元日本ハムほか) 引退惜別インタビュー 長い旅路の先に「最後まで選手として、いつ声が掛かってもいいように準備をしていた」

 

甲子園優勝からドラフト1位でNPBへと進み台湾、アメリカ、BCL、四国ILと続いた長い長い旅路の果てに、2002年の新人王左腕が、24年のプロ生活に終止符を打った。掛けられた願い、言葉は数知れない。今後は蓄えられた知見で次のチャレンジへ――。
取材・構成=高田博史 写真=高田博史、BBM

旅路の最後にたどり着いた愛媛の地への感謝を胸に


糧となった1度目


 エースとして3完封をマークし、桐生第一高を群馬県初の甲子園優勝へと導いてから早24年。左腕は最後の最後まで現役にこだわってきた。2023年11月11日、家族、チームメートに囲まれ引退登板に臨み、万感の思いで、グラブを置いた。まだ経験の浅かった“1度目のNPB”時代は、甘さもあったが間違いなくプロ生活での糧となっていた。

――例年ならこの時期は、体のメンテナンスと家族サービス。23年はまったく違う年末だと思います。

正田 太り過ぎないように(笑)。それだけですね、心配は。

――23年はコーチ兼任でした。

正田 コーチではありますが最後まで選手として、いつ声が掛かってもいいように準備をしていました。

――11月11日、ヤクルトとの練習試合(坊っちゃんスタジアム)での引退試合はいかがでしたか。

正田 かみしめる余裕もなく、最後まで無我夢中で腕を振ったといいますかね。

――00年に甲子園優勝投手としてドラフト1位で日本ハムに入団。プロのレベルの違いは感じましたか。

正田 いい意味になるのか、悪い意味になるのか複雑ですけど。よく「すごい世界に来ちゃった」と言う人がいますよね。「必死になって大活躍した」みたいな。ただ、僕の中ではしっかりやれば、やっていけるなという印象でした。高校(桐生第一)も強いチームでしたし、練習もすごくしっかりやっていましたから。

――当時の桐生第一高は、3年連続で夏の甲子園に出場し、プロに進んだ選手も多かったですよね。

正田 プロの練習も高校でやっていたことと変わらなかった。だから、当時は高校ですごいことをやっていたんだなと思いましたし、それがおごりでもあったのかなと感じますね。

――2年目に初先発を果たしていますが、最初の2年間は思ったように勝ち星が挙げられませんでした。

正田 1年目に一軍の舞台を経験できて「よし! 2年目は頑張りたい!」ってところで、すぐ肩が痛くなってしまう状態になって……。2年目はきつかったですね。自滅するような感じでしょうか。思ったように制球ができないから、精神的にも苦しくなってきました。

――何か制球力の克服につながるきっかけはあったのでしょうか。

正田 いえ、何かこれというのはなかったですね。ただ、3年目(02年)は2月のキャンプから調子が良くて。もう、あれよ、あれよという間に進んでいきました。

――言葉どおり5月にプロ初勝利を完投で挙げ、9勝11敗、防御率3.45で最優秀新人にも選ばれました。

正田 あの年は二軍でスタートしたんですけど、「しっかり(先発)ローテーションを守れるようにならないと一軍には上げない」と言われていたんです。キャンプからオープン戦にかけて本当に調子が良くて。開幕してからも4月末までイースタンで4勝負けなしでしたから。開幕から1カ月ほどたって、チームが少し疲れてくるところで一軍に呼ばれました。それが初勝利した5月です。

――最優秀新人に選ばれたことで自信になった部分もあったと思います。

正田 やっぱり入って1年目、2年目はどうしても甲子園優勝投手というイメージがついて回りました。そこで思うような結果が残せない中、3年目にある程度やれたことで、さらに変なプレッシャーが……。まあ、そこも自分で重圧を大きくしちゃっていただけなんですけど。3年目に一軍で投げられたことで、その重圧が払拭できたと思います。

――翌03年には、27イニング連続無失点など活躍もあった一方、肩痛もあり5勝15敗に終わりました。

正田 その年は前年が良かったんで、悪くても首脳陣に使ってもらえていましたよね。振り返れば日本ハムには、本当にたくさんのチャンスをいただきました。

――その後、07年の開幕前に阪神へとトレードされます。そのころはやはり苦しかった時期でしょうか。

正田 そうですね。二軍でもなかなか投げられなかったので。

――肩痛が苦しかったのでしょうか。

正田 いえ・・・

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惜しまれながらユニフォームを脱いだ選手へのインタビュー。入団から引退までの軌跡をたどる。

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