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Vol.2 谷田成吾[慶大・外野手]
大学球界を代表する左のスラッガー

 

大学屈指の打撃力を誇る慶大の強打者。そのポテンシャルは計り知れないが、現時点でのバッティングには課題を残す。しかし、ドラフト最上位指名も有り得る楽しみな逸材であることに変わりない。

 前号で紹介した高山俊(明大)と引けを取らない力を持つ、大学屈指の打撃力を誇るプレーヤーである。

 しかし、現時点での打撃フォーム(8.5)は残念ながら良いとは言えない。軸足(左足)が折れ、右腰が上がり、打球に角度をつけようとしている。いわゆるアッパースイングである。ホームランを狙おうとしているのか定かではないが、コースに逆らいながら強引に引っ張るスイングをしている。



 慶応高時代に通算76本のホームランを放ち、甲子園未出場ながら高校日本代表に選ばれた実力を持つ、素晴らしいポテンシャルを秘めているのだから、そのときのレベルスイングをもう一度思い出し、取り組んでほしい。そうすればホームランも自然と出てくるはずだ。遠くに飛ばす能力は先天性のものがあり、プロで毎シーズン、20本のホームランを打てる素材を持っている。だからこそ、元来のコースに逆らわらないスイングを取り戻してほしいのだ。

 前に突っ込むバッティングフォームをしているため、選球眼(8.0)も甘い。これもまた、基本に立ち戻ることができれば必ず向上する。

 外野守備(8.5)は左右に対しての打球には強いが、後ろの打球への追う姿勢、前へのゴロ処理へのチャージがまだまだだと感じる。そしてもう一つ、強い地肩は魅力だが、送球は安定していない。試合前ノックでバックホームの際、中途半端なボールを投げることがある。精いっぱい投げるのではなく、正確なボールを投げることを頭に入れてほしい。

 走塁(9.0)は光るものがある。一塁から三塁、二塁から本塁と一つ先の塁を狙う奪塁意欲が非常に感じられる。ホームにかえるときのフックスライディングも巧みで、併殺阻止のスライディングもうまい。相手選手を良く見ている証拠である。それが判断力(9.0)の良さにつながっていると感じる。外野守備の前後への対処、そして打席では進塁打を打つなどのチームバッティングを心掛けることができれば、一回り大きな選手に成長していく。

 メンタル(8.5)は自分で決めてやろうという強い気持ちを持っているようだ。それが力みにつながっているので、打席ではより一層の集中力が必要であろう。

 体力(9.0)はプロで約140試合に出場するつもりで練習に取り組んでいってほしい。そして、ヒザの強化をやるべきだと思う。打撃フォームの話に戻るが、ヒザにゆとりがなく突っ張っている。軸足にしっかりと体重を乗せるためにも、ヒザを強くするべきだ。

 将来性(9.5)は十分になる。プロでも外野のポジションを争える力をすでに手にしている。そのためには、出塁率を上げることも必要となってくる。すなわち四球を選ぶことだ。ボールを長く見ることができれば、自ずと出塁率、さらに打率も上がってくるだろう。

 総合力は(9.0)。15年のドラフト1位候補であることには間違いない。最大の魅力は、速いボールに負けない力強いスイングができること。来春の六大学で再び、あの柔らかい打撃フォームを見ることができるのを期待したい。

■採点表
打撃フォーム 8.5
選球眼 8.0
守備力 8.5
走塁 9.0
3拍子のバランス 9.0
判断力 9.0
メンタル 8.5
体力 9.0
将来性 9.5
総合力 9.0
合計 88.0
※採点の基準は2015年のドラフト対象選手

PROFILE
やだ・せいご●1993年5月25日生まれ。埼玉県川口市出身。183cm90kg。右投左打ち。慶応高では1年春から四番を任され、高校通算76本塁打。甲子園未出場ながら高校日本代表にも選ばれた。同代表には松本竜也(英明・現巨人)、高橋周平(東海大甲府・現中日)らが名を連ねる。慶大進学後、1年春に六大学デビュー。今春に4本塁打を放ち、6季ぶりの優勝に貢献。ベストナインに選ばれる。六大学通算は69試合233打数64安打、打率.275、9本塁打、39打点。
プロフェッショナルレポート

プロフェッショナルレポート

元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

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