週刊ベースボールONLINE


Vol.13 平沼翔太[敦賀気比高・投手]
発展途上の実力派右腕

 

3月21日に開幕するセンバツ大会の注目投手の一人。昨夏の甲子園でチームをベスト4に導くピッチングを見せ、その名はすでに全国に知れ渡っている。強い腕の振りと底知れぬ体力が持ち味。投球フォームさえ安定すれば、ドラフト上位で指名されるだけの力を秘めている。



 昨秋の明治神宮大会では足のケガの影響で、本来の投球が見られず残念だったが、その実力は昨夏の甲子園ですでに証明している。2季連続となるこの春の夢舞台でも、活躍が期待される右腕である。

 何よりも素晴らしいのは体力(8.5)だろう。14年夏の甲子園で、2年生ながらすべての試合に先発した強靭な体は、目を見張るものがある。肩のスタミナ、持久力も十分。一冬越して、一段と体力は増しているはずだ。春もタフなピッチングを披露してくれるに違いない。

 そしてもう一つの魅力が、腕の振りである。これだけ強く腕を振れる投手は、高校生の中ではなかなかいない。しかしながら、投球フォーム(7.0)はまだ安定していない。軸足への体重の乗せが甘く、前足(左足)が着地したときに左ヒザが一塁方面に割れてしまう。そのため、左肩が我慢し切れず開き、ボールがシュート回転になっている。さらに右ヒジの位置も定まっていない。まずはピッチングフォームを見直すことが重要だ。左足をベルト上まで引き上げ、しっかりと軸足に体重を乗せる。そして左肩、ヒザに壁を作ることが大事。軸足へのタメが甘ければ左肩は開きやすい。一本足で立ち、左肩がキャッチャーのミットに対して真っすぐ出ていくイメージだ。

 基本的なフォームをマスターできれば、最速144キロのストレート(7.5)の球速は必ず増す。今は腕の力に頼った投げ方をしているため、ボールの回転も悪く、キレもない。球威不足などの問題を解消するには、フォームを固めることが最優先となってくる。チェンジアップやスライダーなどの変化球(7.5)も、良いときと悪いときの波がある。制球力(7.0)にもバラつきがあり、ストレート、変化球ともに思い描いたところに投げられていない印象だ。ただし、低めに投げようとする意識が非常に高い。特にランナーを背負った場面では、低めの変化球で併殺を取ろうとする姿が見られ、学習能力が高いと感じる。投球術(7.0)はコントロールさえ定まってくれば、ワンランク上のピッチングを見せてくれるはずだ。

 バント処理に対しての一歩目のチャージや同状況での二塁封殺プレーなどの投手守備(7.5)はまだ鈍い。これは投球フォームが左に流れてしまっているためである。ただ、走者を背負ったときは冷静沈着でけん制などもうまく、状況判断にも優れている。今後は一歩目のチャージを意識してトレーニングに励んでほしい。メンタル(8.0)は強い。最後まで投げ切るという責任感を感じる。これからも強い気持ちを継続して、練習に取り組んでもらいたい。

 発展途上のため、総合力(7.5)の評価は低いが、将来性(8.0)はある。何度も言うが、最大の課題は基本的な投球フォームを身につけること。この問題さえクリアすれば球速、コントロール、球のキレなどすべてが良い方向へと転がる。体幹が強く、下半身も安定している。腕の振りも高校生の中ではトップクラスで、打者を封じる知恵を持っている。だからこそ、現状では物足りない印象なのだ。まだまだ伸びる素材だけに、その期待は大きい。

■採点表
投球フォーム 7.0
ストレート 7.5
変化球 7.5
投球術 7.0
制球力 7.0
守備力 7.5
メンタル 8.0
体力 8.5
将来性 8.0
総合力 7.5
合計 75.5
※採点の基準は2015年のドラフト対象選手

PROFILE
ひらぬま・しょうた●1997年8月16日生まれ。福井県出身。178cm75kg。右投左打。社中時代はヤング・オールスター福井に所属。昨夏の甲子園では2年生ながらも5試合すべてに先発し、4勝。チームを19年ぶりのベスト4に導く力投を見せた。昨秋の北信越大会でも全4試合に先発し、優勝の原動力。今春の選抜高校野球では大会屈指の右腕として注目を集めている。
プロフェッショナルレポート

プロフェッショナルレポート

元巨人チーフスカウトで現在はベースボールアナリストとして活動する中村和久によるドラフト候補生の能力診断。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング