週刊ベースボールONLINE


第20回 球界をひとつに――リーダーシップの発揮は“野球先進国”日本の責任

 

 世界各国・地域のアマチュア野球を統括する国際野球連盟(IBAF)は、来年11月に12カ国・地域が参加する新たな国際大会となる「プレミア12」(仮称)の開催を検討している。2011年までアマ主体で行われていたワールドカップ(W杯)に代わる大会として、メジャー・リーグ機構(MLB)開催のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の中間年に実施する方針。構想は2年前にIBAFのリカリド・フラッカリ会長から発表されたが、日本を開催候補にしているというだけにとどまり、詳しい概要は今も正式にアナウンスされていない。

 フラッカリ会長は発表当時、同大会に「メジャー・リーグからの参加も出場できるよう、MLBと協議したい」と話している。同大会の成功のカギは、水面下で行われているIBAFとMLBとの話し合いが握っていると言える。

 日本はプレミア12に、常設化された野球代表「侍ジャパン」が参加する方向性を固めている。日本で開催するとすれば、侍ジャパンを事業化推進プロジェクトとしてとらえている日本野球機構(NPB)がどういう位置付けで参画するのかなど、実務面で協議を深めなければならない課題も多い。

 プレミア12をWBCに匹敵する大会にするには、MLBはもちろんファンの多いアジアの熱気が必要だ。そのためには、日本のリーダーシップが果たす役割は大きい。

 一昔前の日本がそうだったように、現在の台湾球界では、プロ・アマの溝が深刻だ。職業としてのプロと、無報酬を建前としているなど制約が多いアマが折り合う気配がなく、まさに水と油の状況。台湾に限らず、韓国にも同様の状況はある。アマのIBAFが主催するプレミア12には、NPB、MLBをはじめとした各プロ組織が絡まざるを得ない。大会が盛り上がるためには、球界一丸となった態勢が不可欠なのだ。

 日本は「侍ジャパン」プロジェクトの実施で、チーム運営、ビジネスの両面でプロ・アマの急速な雪解けが進んでいる。プロを中心に編成する「トップチーム」を頂点に、アマの各世代チームが組み込まれた“ピラミッド”を形成。同一の「侍」ユニフォームを着用した選手をシンボルに、マーケティングもプロ・アマで協力するシステムを構築した。

 プロ野球各国・地域の優勝チームが争うアジアシリーズなどの関係で、日本は台湾プロ野球(中華職棒大聯盟=CPBL)と良好な関係を築いてきた。小久保裕紀監督率いる侍ジャパンの昨秋の台湾代表との初陣で、台湾アマ野球(中華民国棒球協会=CTBA)との親交もある。プロ・アマの在り方を含め、日本が仲介役を務める資格は十分にある。「侍」プロジェクトの責任者であるNPBの熊嵜勝彦コミッショナーが、「アジア・ベースボール・サミット」を働きかけてみてはどうだろう。ホスト役としてアジアシリーズに出場するオーストラリアや欧州の球界トップに声をかけ、最終的にはMLBにも範囲を広げられたらいい。今後の国際大会などについて協議を深め、各国・地域のプロ・アマ共同で協力を誓う“東京宣言”を出せば、球界がひとつにまとまるきっかけになる。リーダーシップの発揮は、野球先進国となった日本の責任でもある。

▲侍ジャパンの名の下に“ピラミッド”を形成している日本がリーダーシップを発揮してアジアをまとめたい[写真=BBM]

日本球界の未来を考える

日本球界の未来を考える

週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング