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第40回 指導者育成テキスト――指導者が独立リーグで実績を積めるシステムの構築

 

 プロ野球が勝負の季節に突入している。「夏を制する者がペナントレースも制す」と言われるが、セ、パ両リーグとも秋の優勝争いに向けたシ烈な戦いが繰り広げられている。

 ペナント争いとは別に、ストーブリーグの話題もささやかれ出した。来季の続投が早々に正式決定したのは、就任4年目を迎える日本ハム栗山英樹監督。ソフトバンク秋山幸二監督も、7年目の指揮を執ることが濃厚となっている。今後もペナントレースの進展具合で、新たな監督人事が持ち上がってくることが予想される。

 監督人事のシーズンが来るたびに問題となるのが、指導者の人材不足だ。グラウンドで数字を残した過去の主力選手や、球団の功労者をいきなり新監督に抜擢する手法は相変わらずで、指導者としての力量は未知数なケースがほとんど。プロ野球は人気商売で、かつての“スター”に頼らざるを得ない事情はあるにせよ、強さを求める者たちの選定方法としては発想にズレがある。

巨人・原監督をはじめ日本球界ではスター選手が監督を務めることが多いが、監督育成法をいろいろ構築した方がいい[写真=桜井ひとし]



 メジャー・リーグの場合、監督の役割が明確だ。チーム補強や球団経営のほとんどの権限を有しているゼネラルマネジャー(GM)らに対し、選手起用や勝敗など試合の全責任は「フィールドマネジャー」と呼ばれる監督が負う。日本には“全権監督”として編成権にも大きな影響力を及ぼす契約を結ぶ指導者がいるが、ほかのプロスポーツでは原則的にはあり得ない。役割と責任の所在をはっきりとさせることで、対処を取りやすくし、チーム戦略の継続性を保つことができる。

 監督になる道もたやすくはない。現役時代の成績は重視されることなく、マイナー・リーグのコーチなどを経て、指導者としての適性を試される。たとえスター選手といえどもメジャー監督の席は約束されておらず、有名でなくてもビッグチームの監督になることが可能。球団ばかりでなく、ファンも実力主義を当たり前のものと受け止めている。

 プロ野球は近年、BCリーグや四国アイランドリーグplusなど独立リーグとの連携が進んでいる。選手の交流にはじまり、今年から新設された日本野球機構(NPB)審判学校から、研修審判員も派遣されている。NPB12球団のプロ野球を頂点として、独立リーグが実質的な“マイナー・リーグ”として機能している形だ。NPB側は実戦の場を増やすことができ、独立リーグ側は人件費を節約できるなど、お互いにメリットがある。NPBと独立リーグ両関係者は「お互いに、うまく不足部分を補える関係になれればいい」と口をそろえており、両者の蜜月はさらに深まりそうだ。

 指導者に関しては、かつてNPBでプレーした選手が独立リーグのチームの監督やコーチになったケースはある。だが、将来のNPB12球団のいずれかの監督になることを見据えた就任はまだない。

 セ・リーグのある関係者は「監督をはじめ、コーチが独立リーグで実績を積めるようなシステムを作れたらいいだろう。きっと双方の発展につながると思う」と、私案を打ち明ける。バラ色だけには終わらない指導者育成のプロセスは、未来の名監督を生むための“テキスト”となるはずだ。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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