「2014年 SUZUKI 日米野球」が11月12〜18日まで、東京ドームほかで開催される。8月20日に東京都内のホテルで行われた要項発表では、今年4月に「500本塁打クラブ」に仲間入りしたアルバート・プホルス(エンゼルス)をはじめ、昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝したドミニカ共和国代表を務めたロビンソン・カノ(マリナーズ)、さらに
アダム・ジョーンズ(オリオールズ)、ヤシエル・プイーグ(ドジャース)の一線級を加えた4選手がメジャー・リーグ選抜チームとして先行発表された。
最終的なチーム編成は11月に明らかとなる。豪華なメンバーを迎え撃つことになった日本代表「侍ジャパン」の
小久保裕紀監督は、「2017年の第4回WBCに向けた強化試合の相手として、戦いがいのあるチームになりそう」と闘志を燃やした。
▲日米野球の記者会見で意気込みを見せる小久保監督。代表のステータスが上がれば、もっと選手のやる気も増すはずだ[写真=桜井ひとし]
侍ジャパンの全メンバーはシーズン終了後に出そろうが、7月中旬に1次メンバーの
金子千尋、
糸井嘉男(ともに
オリックス)、
前田健太(
広島)、
嶋基宏(
楽天)、
坂本勇人(
巨人)、
中田翔(
日本ハム)の6人が発表済み。初の代表入りとなった金子は、「名誉なこと。変化球がどれだけ通用するか試したい」と、高揚感を隠さない。
国際試合を基軸に据えた「侍」ビジネスを推進している日本野球機構(NPB)は、12球団に対し選手供出の全面協力を求めている。過去、シーズンへの悪影響を理由にWBCや五輪への選手供出を球団が渋ったケースが続出。各球団が2人ずつ出したアテネ五輪の長嶋ジャパンのように枠を設けた大会もあったが、今後は「制限なし」が原則。代表監督らが希望する選手を自由に選抜できる方向で合意している。“日の丸”を背負ったチームへの球界全体の支援体制を阻害していたハードルは、徐々に取り払われつつある。あとは、恒常的なマッチメークの確保と、メジャー・リーグ所属チームの日本人選手を、いかにして「侍」に取り込むかという課題だけだ。
お隣の韓国は過去の国際大会に対し、国を挙げてのバックアップ態勢で臨んだ。WBCなど国際大会に出場して高い成績を挙げた選手に兵役免除など恩恵を与える特例を、国会で決定。国の代表という名誉だけではなく、実のある形で報いている。代表の誇りと、選ばれたいというモチベーションは、嫌が応でも高まるわけだ。
一方、日本は現在、特に野球代表への周囲によるサポートはない。それなりのリスクを背負う国際大会の代表としてのプレーの対価は、名誉とプライドだけだ。ラグビーのような出場に応じたキャップ制を導入しようという意見も一部にある。だが、韓国のように、選手にそれなりの“実益”となる見返りがあってもいい。
ある球界関係者は、例えば「初めて代表入りした選手に、FA取得の期間短縮の恩恵を与えてはどうか」という案を挙げる。1年短縮では所属球団が大きな損失を被るだろうから、半年もしくは3カ月という期間なら問題ないとしている。「侍」がステータスとなるために有効な方法は、いろいろとあるはずだ。球界が積極的にアイデアを出し合い、メリット、デメリットを洗い出しながら審議することが新機軸成功の近道となる。