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第46回 ドラフト制とは(1)――即戦力補強の場である日本のドラフト

 

 プロ野球の新人選手選択会議(ドラフト会議)が、今年も10月23日に行われる。1965年から導入されたドラフトは、ここまで改定を重ねながら、1位重複の場合は抽選で単独交渉権を獲得するなど、日本独自の変則ルールとなっている。「選手の職業選択の自由を尊重する」という建前の下、過去には有力選手が希望球団に入団できる“逆指名制度”も適用。だが、金銭供与など不正が発覚して、その温床となる逆指名制は2006年を最後に廃止された。

 そもそもドラフトは、契約金高騰の防止とともに、戦力均衡という効果を狙った制度だ。その論拠は、戦力が一方的に偏ってしまうと、試合の面白みが減り、ひいては野球人気の低下につながるというもの。地方へ本拠地を移したパ・リーグを中心に、フランチャイズ制が強化され、地域に特化するファンも増えた。一昔前のように一部の人気球団だけが強ければいいという時代は終わっただけに、あらためてドラフト制についての意義が問われている。

▲昨年のドラフトで3球団が1位入札して広島が交渉権を獲得した大瀬良は10月3日現在、10勝をマーク。このように日本のドラフトは即戦力を求める傾向が強い[写真=BBM]



 ドラフト制と切っても切れないのが、ウエーバー制。選手指名の優先権が下位球団に与えられる制度で、メジャー・リーグや北米アイスホッケー・リーグなどのプロリーグでは、原則的に完全ウエーバー制を採用している。楽天の三木谷浩史オーナーをはじめ、日本のプロ野球ではこの方式を支持する球団も多い。

 なぜ、ウエーバー制度を取り入れないのか。「巨人ソフトバンクなど資金力のある球団が難色を示しているから」というもっともらしい説もあるが、そう短絡的には論じられない。

 まずは、日本球界の独特の状況がある。日本球界はアマのレベルが異常に高く、甲子園という舞台を目指す高校野球をはじめ、社会人野球など一握りのトッププレーヤーがプロですぐに通用するだけの実力を持っている。一方のアメリカはプロとアマの力の差が歴然で、ドラフトは「将来の戦力の確保」という認識だ。

 日本の場合、ドラフトは即戦力補強の場だ。毎年数人の限られた目玉選手の獲得を目指すドラフトは、ウエーバーよりも現状の「競合抽選」方式がより公平だというのも一理ある。単純に下位球団から指名できるウエーバー制の適用は、シーズン終盤に下位低迷する球団が、有望新人を獲得するために“敗退行為”に走る可能性が出てくる。アメリカのプロリーグでは実際、過去にそれに近いケースが幾度か問題視された。

 ただ、現行の日本独自の変則ドラフトにも課題は多い。意中の球団以外が指名した場合、メジャー・リーグ挑戦や社会人チームとの契約をすると宣言して球団を拒否するという、実質的な“逆指名”がまかり通っている。選手にとっては当然の権利ではあるが、大事なキャリアの何年かを棒に振るリスクを背負わせられることになる。タレントを求めるプロ球界にとっても、マイナスなのは間違いない。

 ドラフト制だけにとどまらず、ポスティングやフリーエージェント(FA)など複雑に入り組んだルールを絡め、包括的に考えなければ正しい方向には進まない。選手のポテンシャルを最大限に発揮できる場を作るには、どうすればいいのか。その入口であるドラフト制がどうあるべきかを、球界がもう一度真剣に議論すべき時期がきている。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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