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第49回 球界再編から10年(2)――さまざまな“変革”がもたらした活性化

 

 近鉄が消滅し、楽天が半世紀ぶりにプロ野球に新規参入。2004年オフに勃発した再編騒動から10年経過したが、さまざまな“変革”が球界を活性化させた。

 史上初の選手によるストライキを経て、経営難に苦しんでいたパ・リーグの念願だったセ・リーグとの交流戦が実現。リーグ戦の3位までのチームが出場権を持ち、日本シリーズ進出を懸けて戦うクライマックスシリーズ(CS)も導入された。

 10回目を迎えた今年の交流戦の観客動員数は、1試合平均の前年比でセが3.6パーセント増で、パが2.4パーセント増。指名打者(DH)制をリーグ戦では採用していないセの本拠地球場で行い、パでは採用しない本来とは逆の方式も支持を呼んだ模様。惜しくもCSファーストステージで敗れたが、広島が12球団最多の26.1パーセント(1試合平均2万4513人)と大幅に伸ばした。過密な日程などの理由で、セの強硬な主張により来年から各球団6試合減の18試合制となったが、ファンの交流戦の注目度は大きい。今後も球界発展のためには、綿密な検証と両リーグのエゴを捨てた話し合いが必要だろう。

 CSはさまざまなアンケート等で、「最も見たい試合」の上位となる制度だ。下位球団が勝ち上がる不条理さへの疑問の声もあるが、人気のバロメーターである観客動員数などから判断すると、成功していると言っていい。

10月12日、オリックス日本ハムのCSファーストステージ第2戦、オリックス主催の京セラドームでは2005年の実数発表以来、最多の3万6012人の観客を集めた[写真=毛受亮介]


 メジャー・リーグ機構(MLB)は2年前から、ポストシーズンでワイルドカード・ゲームを導入した。東西中3地区で優勝を逃した球団の中から、勝率上位の2球団同士が激突。1試合で地区シリーズの進出が決まる新たなルールは、その一発勝負ならではのドラマ性が受けている。

 いかにファンを飽きさせずに、楽しませられるか。エンターテインメントの本場であるアメリカは、一日の長がある。賛否両論があるが、今年から機材等に何億円もかけてビデオ判定によるチャレンジ・システムを導入するなど、発想力と行動力の違いは歴然だ。新制度を議論するときに必ず出てくる「試合はホーム、ビジターで公平に行わなければならない」「スポンサーが親会社等と競合するからできない」など、小さなしがらみに縛られていては、現状は永久に打開できない。

 今年の5月下旬、自民党が政府の成長戦略に関する党側提言の中で、球団数を現在の12から16に増やす構想を明らかにした。「フランチャイズを全国に分散化させ地域活性化を図る」「東地区と西地区への再編成」などもアイデアとして盛り込まれたが、その後、音沙汰なしとなっている。球団数の拡大、いわゆる“エクスパンション”は、メジャー・リーグの例を見るまでもなく球界活性化に有効な策だ。球団数が増えることで、再編はもとより、ワイルドカードなどの新たなルールを創出しやすくなるからだ。

 しっかりとした哲学を持った新たな企業が球界に参入しやすくなるよう、各界のリーダーが道筋を示してほしい。無責任な政治家らの人気取りや話題作りに利用されて終わるようなら、プロ野球の次の10年に向けての未来はない。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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