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第77回 時代を見つめたプロ・アマ関係――現役選手の高校球児への直接指導の解禁を!

 

 7月に韓国の光州で開催される第28回ユニバーシアード競技大会に出場する野球日本代表「侍ジャパン」大学代表の日本野球機構(NPB)選抜との壮行試合が、6月29日に神宮球場で行われることになった。大学代表には、全日本大学野球連盟が吉田侑樹(東海大)、高山俊(明大)ら22人を推薦選手としてリストアップ。NPB選抜は、田中英祐(ロッテ)や高橋光成(西武)ら二軍中心の若手22人が選出された。

 プロとアマの交流は、今や珍しくなくなった。同じグラウンドに立つことすらできなかったことを思えば、隔世の感がある。女子を含めたプロ・アマ各世代代表をサポートする侍ジャパンプロジェクトが、両者の雪解けの象徴だ。野球の正式競技復帰を目指す2020年の東京五輪も視野に、プロとアマの協力体制は着々と進んでいるように見える。

 事業運営面では強力なタッグを組むプロ・アマ球界だが、技術交流の面では、残念ながらまだまだ。中でもなかなか崩れそうにないのが、プロと日本高校野球連盟(高野連)との間にある分厚い壁だ。

 昨年、元プロが講習受講により高校野球の指導者になれる道が開けたが、現役選手が高校生に直接指導をすることは禁止されたままだ。球児にしてみれば、一線級でプレーする旬のプロ選手は、最高レベルの技術を持つ生きた教材だ。直接指導が可能となれば、全国規模での高校球界の底上げへとつながる。そんな機会が奪われたままの現状は、不可思議としか言いようがない。

 今年の1月、NPBとアマ球界を統括する全日本野球協会が、アマ指導者のための講習会(ベースボール・コーチング・クリニック=BCC)を千葉の幕張メッセで合同開催した。メジャー経験もある元ロッテの小宮山悟氏、元巨人で侍ジャパンU12監督の仁志敏久氏らが実技研修の講師を担当。ケガを防ぐための科学的な体の使い方など、根性論一辺倒ではない指導のノウハウを指南した。

現役選手が常に高校球児を指導できる環境が整えば、球界にとって非常にプラスとなる[写真=BBM]



 打撃部門を受け持った元西武の高木大成氏は、硬式球に対するバットの振り方について指導。「古くからの定説であるボールを上からたたく方法を画一的に教えることは、選手の可能性を狭める」という指摘をしている。攻守すべての面で、トップレベルの野球は変わり、進化している。ほかにも走塁の技術や、足運びなど内野手の動き、また外野のシフトなど、プロがアマに伝授できる最新知識は多い。

 高校球界を含めた学生側とプロとの断絶は、プロ側の行き過ぎた勧誘が発端となったことは明白だ。しかし、プロ側は愚行を繰り返しながらも、自浄努力をしている。かたくなに距離を置くだけの関係はいかがなものか。お互いの繁栄のため節度あるルールを掲げ、前に進むべきだろう。

 特に甲子園で活躍できるほどのレベルの高い選手には、「生きる術として野球をやっている」と言い切る高校球児も少なくない。高校野球という3年間だけの観点ではなく、球児のこれからの人生の手助けをすることも大事な「教育の一環」なのではないか。かつて自身の興行のことだけを考えていたプロは、野球普及という哲学をアマと共有して変わりつつある。高野連も現実と時代を見つめ、柔軟に変わってほしい。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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