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第80回 削減に傾く交流戦――その存在意義を今オフにも検証し、セ、パが真剣に議論することが必要

 

 プロ野球セ、パ両リーグによる交流戦が、5月26日からスタート。今年で11年目を迎える交流戦は、昨年までの各チーム24試合から18試合に削減。それに伴い、内容も大きく変わった。

 12球団それぞれが単独で優勝を争う方式から、セ、パのリーグ対抗戦形式に変更された。各チームとも6カードのうち3カードをホームで開催し、来年は今年実施する対戦カードのホームとビジターを入れ替える「2年越しのホーム・アンド・アウエー方式」となる。また、昨年までオールスターゲームの勝敗で決めていた新人選択(ドラフト)会議でのウエーバー順の指名優先権を、交流戦で勝ち越したリーグが勝ち取ることも定められた。

 勝ち越したリーグの中で勝率1位の球団に1000万円、2位に500万円など、順位に応じた賞金が与えられる。前年までの優勝にあたる12球団の最高勝率チームには、別途で500万円が贈られる。

 交流戦をめぐっては昨年まで、本拠地にドーム球場が2つしかないセ(パは4つ)が「試合の消化に大きな差が出て、日程がタイトになる」として削減を主張。現状維持を主張していたパを押し切る形で今年からの18試合に落ち着いた。交流戦はパ球団の経営難に端を発した2004年の球界再編騒動を経て、05年から実現。「交流戦の実施でリーグ戦が減り、巨人戦などの人気カードをパに食われる」という意見が今も根強い。36試合から24試合、そして18試合と徐々に減らされたが、セとしては「導入したのは、再編当時のパの救済策だった。もうなくてもいい」というのが本音だ。

試合数削減が続く交流戦。何よりもファンが納得する方策を取らねばらない[写真=小山真司]



 18試合ということで、相手リーグ全6チームそれぞれと3試合しかできない。奇数であることからホームとビジターで均等割りできず、2年にわたり主催とビジターを3試合ずつ行う方式とならざるを得なかった。この変則開催については、疑問を呈する現場の声も多い。

 某セ球団のヘッド格コーチは、「勝負は本来、条件がイコールであるべき。本拠地で試合ができる、できないというのは、選手にしてみれば部外者が思っている以上に勝敗に影響がある」と指摘。「それが1シーズンでリセットされるリーグ戦の成績に反映されるのはおかしい」と主張する。チーム単独の順位ではなくリーグ対抗戦となったことについても、あるベテラン選手は「交流戦の勝敗がチームのリーグでの順位に連動するのは昨年までとは変わらないし、あまり意味はない」と冷ややかだ。

 新方式は2年で1セットだから、来年も同じ方式で同じようにやるべきだ。だが、削減の流れになっている交流戦について今オフにも検証し、その存在意義をセ、パが真剣に議論することが必要だ。「交流戦の方式や是非については、今後もしっかりと継続審議する」というのが、昨年12球団の合意事項だったのを忘れてはならない。

 開幕から2カ月を過ぎると、リーグ戦での他5チームとの戦いぶりもややマンネリ感が漂ってくる。ここで交流戦の実施が、球界を盛り上げることにつながるのは間違いない。実際、交流戦を支持するファンは多く、削減決定は「セのどさくさ紛れのゴリ押し」という声も少なくなかった。だからこそ、営業サイドの論理を優先するのではなく、ファンも納得できるガラス張りの意見のぶつけ合いが必要となる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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