週刊ベースボールONLINE


第87回 オーナー会議の価値――なぜ“主役”が勢揃いしないのか、トップの責任を放棄する姿勢は「?」

 

 プロ野球12球団によるオーナー会議(後藤高志議長=西武オーナー)が7月8日、東京都内で開かれ、2020年東京夏季五輪で野球が競技に復帰した場合、日本代表はプロ中心の最強チームで臨む方針を決めた。日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーは「ベストチームで出場するという意思表示はできた」と話し、各球団が積極的に選手供出をする意思統一を図った。

 また、自民党を中心としたスポーツ議員連盟が新国立競技場の総工費の新たな財源を確保するため、スポーツ振興クジ(愛称toto)をサッカーからプロ野球まで広げるための法改正を検討していることもNPB側から報告されたが、ほとんどのオーナーが「賛同できない」と表明。巨人の白石興二郎オーナーは「東京五輪にオールジャパンで協力するのは当たり前だが、それがクジを受け入れることにつながるかどうかは、他球団とよく相談しなければいけない」と各オーナーの意見を踏まえながら、慎重に進めるべき問題であることを強調した。

 会議には、今年1月に女性で初めてプロ野球の球団トップに就任したDeNAの南場智子オーナーが初出席。「野球振興は、子どもがいかに興味を示してくれるかが重要。その子どもたちに影響を与えるのが母親で、女性をしっかりと巻き込んでいくことが大切」と発言をした。

 五輪日本代表のチーム編成については、過去も物議を醸したシーズン中の開催がペナントレースへの負担になるという発想から、選手供出に難色を示した球団もあった。今回の会議でオーナーたちが「ベストメンバー」とはっきりと編成の方針を示したことに意義がある。代表となる侍ジャパンのメンバー選抜方法は今後「各球団公平に」という意見も出てくるだろうが、最高会議での決議事項の重みは、12球団も軽んじることはできないはずだ。

 今年11月に開催されるプレミア12と、2年後に迫ったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など今後行われる国際試合も、12球団による「オールジャパン」の精神が大切だ。主力を出し惜しみする球団のエゴが先走りしては、勝利もファンの支持も得られない。

 球界のリーダーシップを明確に示したという意味では、オーナー会議の権威は色あせていない。だが、残念なのは、球界の今後の方針を決める年2回程度の最高会議に、“主役”たちが勢ぞろいしていないことだ。特に欠席が目立つのが、04年に勃発した球界再編騒動から発言権を強めてきたパ・リーグの一部のオーナーたちだ。

オーナー会議には球界トップはきちんと出席して、発言してもらいたい[写真=椛本結城]



 NPBエンタープライズを柱とした侍ビジネスの確立には熱心だったが、肝心の球界運営に生の“声”を発信しないのはいかがなものか。本業に追われて時間が取れないのかもしれないが、球界トップに課されている責任を放棄し、決定権のない実務者に丸投げする姿勢は嘆かわしい。12人しかいないオーナーの発言がどれだけ重く、未来の球界に影響を与えるかを真剣に考えてほしい。
日本球界の未来を考える

日本球界の未来を考える

週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング