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日本球界の未来を考える

第97回 CSの未来――従来通りの思想を貫くか、独立した存在として割り切るか

 

 セ・パ両リーグの日本シリーズの出場権を懸けたクライマックスシリーズ(CS)が、今年もまた始まる。レギュラーシーズン上位3チームで争う現在の形になったのは、2007年から。あるパ球団の営業関係者によると、CSは「リーグ戦、交流戦、日本シリーズよりも人気がある」という。優勝争いだけではない見せ場を創出し、最後までペナントレースの興味が失せない敗者復活方式は、ファンにもすっかり定着した感がある。

 同時に、CSに疑問を投げ掛ける声も少なくない。リーグの下位チームが日本シリーズで優勝する可能性が大いにあり、「ペナントレースの価値が失せる」という考え。昨年の巨人のように、セの1位になりながら、CS敗退で日本シリーズに出場すらできないケースがこれからも起こり得る。現在のCSの形態を取る限り、必ずしもリーグ覇者と日本一のチームは一致しない。「日本シリーズを制したチームに、無条件で日本一の称号を与えるのは、いかがなものか」という意見も、心情的には分かる。

 CSの成績次第では、今年圧倒的な強さでパを制し、交流戦でも12球団で最高の勝率を残したソフトバンクが、日本シリーズに出場できない可能性もある。現在のプロ野球で「最強」の呼び声高いチームでも、運が大きく影響する短期決戦では何があるか分からない。ファイナルステージで1位チームに1勝のアドバンテージがあるとはいえ、流れをつかみ損なうと敗退する危険性がある。そこがファンにとってはたまらない楽しみにもなるが、不条理極まりないルールであることは確かだ。

圧倒的な強さでパを制したソフトバンクが日本シリーズ進出を果たせなかったら、再びCSの是非が叫ばれるかもしれない[写真=毛受亮介]



 2位、3位のチームにすれば格好の巻き返しのチャンス。しかし、CSの結果が、ペナントレースに優先されるのはどうか。かなりのゲーム差を付けられた下位チームがシリーズを制したとしても、「日本一」を名乗るのがふさわしいのか。歴史ある日本シリーズの権威にもかかわることだけに、判断は難しい。

 選手、監督らユニフォーム組の意見に耳を傾けると、ペナントレースに対する並々ならぬこだわりの強さを実感する。143試合の過程には、さまざまな苦労とともに、チームが変貌していく喜びも味わう。短期決戦であるCSや日本シリーズへの思い入れとは、まったく別物だ。

 CS導入後、日本シリーズがペナントレースから乖離している現実を受け入れられるかどうかだ。CSからシリーズまでをカップ戦的な独立した存在と割り切れるなら、現行ルールは“あり”だろう。だが、もし日本シリーズを従来どおりの「日本一決定戦」として権威を求めるのなら、制度変更も視野に入れるべきだ。

 勝率5割に満たないチーム、1位から10ゲーム以上離されたチームの扱いは、見直しを図る必要がある。興行その他の事情でCS出場の権利は剥奪できないだろうから、上位チームにアドバンテージを増やすなど、これまで以上にハードルを高くしてはどうか。「リーグ戦を制したチームが日本シリーズに出場できる」という従来どおりの思想を貫くなら、ペナントレースを前期・後期に分けてプレーオフであるCSを戦うのもいいだろう。少しでも問題点があるのなら、関係者が建設的な議論を交えることが大事だ。たとえルールが変更されなくても、未来のプロ野球の活性化につながる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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