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日本球界の未来を考える

第102回 国際大会へのプライド

 

各世代の代表チームの確立が国際大会への意欲をかき立てレベルアップへ


 野球の国・地域別対抗戦「プレミア12」がいよいよ始まる。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のランキング上位12チームが出場し、ランキング1位の日本からは小久保裕紀監督率いる「侍ジャパン」が参戦。11月8日の札幌ドームで行われるグループBの開幕戦で、過去数々の国際大会で死闘を繰り広げたライバル韓国とぶつかる。

 日本はエースに指名された前田健太(広島)をはじめ、大谷翔平(日本ハム)、菅野智之(巨人)ら主力投手陣がエントリー。野手陣は打率3割、30本塁打、30盗塁をクリアした「トリプルスリー」の山田哲人(ヤクルト)と柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)、中田翔(日本ハム)─と、いずれも球界を代表する初開催大会にふさわしい豪華メンバーとなった。

プレミア12に臨む小久保監督。ぜひ、熱い戦いを繰り広げてほしい[写真=小山真司]


 総当たりの1次ラウンドで日本が対戦するグループBは、韓国以外にメキシコ、ドミニカ共和国、アメリカ、ベネズエラの強豪5チームがひしめいている。決勝トーナメントに進出するためには、グループで4位以内に入らなければならない。小久保ジャパンといえども1次ラウンド敗退の可能性は大いにあり、厳しい大会となりそうだ。

 グラウンドで戦う「侍」たちには大変なプレッシャーだが、今後の日本球界の財産となるのは間違いない。2年後に予定されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や、正式復帰を目指す五輪など国際大会に向け、貴重なデータの蓄積となる。ぜひともラグビーのワールドカップ(W杯)のように、内容の濃いプレーを繰り広げてほしい。手に汗を握る熱戦は、国内外に向けての野球普及の何よりの近道。新設された「プレミア12」というコンテンツに価値を持たせることが、日本をはじめ世界のトップとして選ばれた12カ国・地域チームの使命だ。

 国際大会はファンだけではなく、選手にとっても少なからず影響を与えるはずだ。甲子園を沸かせたオコエ瑠偉(関東一)、小笠原慎之介(東海大相模)、高橋純平(県岐阜商)らが出場した9月のU-18(18歳以下)W杯では、健闘しながらも決勝でアメリカに惜敗。オコエらは「プロに入ってレベルをもっと上げ、次は五輪で雪辱を果たす」と誓った。国の威信を背負った戦いは、1つのカテゴリーでは収まり切れないプライドを生む。

 先に行われたドラフト会議では、各世代の侍ジャパンに選出されたことのある選手30人が12球団から指名された。高校生では3球団が競合した高橋純平がソフトバンク、平沢大河(仙台育英)がロッテ、小笠原が中日、オコエが楽天と、U-18組がそれぞれ1位で交渉権を獲得。昨年11月のW杯に参加したU-21からは桜井俊貴(立命大)が巨人の1位指名を受けた。12球団中9人の1位選手が、国際大会を経験した「侍」出身者となった。

 各世代の代表チームの確立が国際大会への意欲をかき立て、レベルアップへとつながる。WBCや五輪がそうであるように、プレミア12も選手やファンのあこがれになってくれればいい。プロ・アマ一体となったグローバル化を図ろうとしている日本球界の目論みは、ここに来て軌道に乗りつつある。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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