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日本球界の未来を考える

第106回 プレミア12の今後

 

一過性ではない、永続性のある国際大会への取り組みが不可欠


 プロ野球日本代表「侍ジャパン」が、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)の世界ランキング上位12カ国・地域が争うプレミア12で3位に終わった。準決勝でライバル韓国を相手に8回までに3対0とリードしながら、9回にリリーフ陣が崩れ、一気に4点を失う逆転負けを喫した。2017年に予定されているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)など今後の国際大会に向け、編成バランスや投手継投をはじめとした起用法など、総括すべき点は多い。

 とは言え、五輪競技復帰アピールと世界的普及を目的とした初めての国際イベントとしては、上々の滑り出しとなった。160キロ超の剛球を繰り出した大谷翔平、チャンスで適時打を連発した中田翔らがハツラツとしたプレーを繰り広げ、日本のファンにはたまらない展開が目立った。新設イベントの盛り上がりが心配された中、テレビ視聴率が20%を突破するなど注目度はまずまず。11月12日に行われた1次リーグのドミニカ共和国戦の平均視聴率は15.4%で、同時間帯に生中継されたサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会アジア2次予選のシンガポール対日本の13.2%を上回るなど、野球人気が衰えていないことを証明した。

 敗れたものの、世界で唯一の代表チームである侍ジャパンは、存在感を十分に示した。プエルトリコとの準々決勝まで6戦全勝で勝ち上がった試合で目立ったのが、これまでの急造の代表チームにはなかった一丸となったときの強さ。ロースター制を採用し、シーズン中から意識をあおってきたことも、まとまり具合に影響したのだろう。小久保裕紀監督が繰り返してきた「代表としてのプライド」が、国際大会で大きなエネルギーとなったのは間違いない。

 何よりも、侍たちが試合に“本気”で臨んだのが良かった。親善試合程度の軽い気持ちで戦えば、必ずプレーの随所に出てくる。真剣勝負ならではの必死の形相が、視聴率の高さに直結したはずだ。シーズンは自身の成績が年俸等に跳ね返ってくるが、国際大会では名誉とプライドのためだけに戦う。身をもって感じたこの素晴らしさや負けた悔しさを、次の大会や世代に引き継いでほしい。

プレミア12は銅メダルに終わった侍ジャパンだが、その戦いっぶりが興味を引いてテレビ中継が高視聴率を稼ぐなどアピールした[写真=小山真司]



 立ち上がった「侍」プロジェクトの関係者は、今後もこの姿勢を決して忘れないことだ。常に最強メンバーで編成し、世界の強豪に死力を尽くして立ち向かうことが、さらなる野球人気につながることを再認識しなければならない。そうすれば優勝した韓国をはじめライバルたちも強いチームを送り出し続け、価値の高い大会として着実に根付く。

 残念だったのは、WBCと同様に、自らのリーグ戦を優先したメジャー・リーグ機構(MLB)が、主力選手の供出を拒んだことだ。どこのチームも思いどおりの編成ができなかったというのが実情だろう。MLBのスターたちが出場していたならば、さらに大会は盛り上がったはずだ。

 渋るMLBを同じ舞台に引きずり出すには、侍たちがさらに強く輝くしかない。価値の高い国際大会で強さを見せ続ければ、誇り高きMLBの選手たちも、きっと心を動かす。そのためには12球団が選手の供出をはじめ、一過性ではない、永続性のある国際大会への取り組みが不可欠となってくる。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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