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日本球界の未来を考える

第112回 選手の年俸アップのためには

 

メジャーへの対抗処置は当然必要。大幅な増収策を球界全体で考えたい


 広島からポスティングシステムによるメジャー移籍を模索していた前田健太が、名門ドジャースと8年契約をした。年俸は300万ドル(約3億5000万円)と広島時代と大差ないが、年間32試合登板や200投球回などの諸条件をクリアすれば、出来高で最大1億ドル(約118億円)が支払われる模様。日本球界では考えられない破格の契約内容に、前田は「長きにわたって契約してくれた恩を、結果で返したい」と満足の様子だ。

 高いレベルの舞台への挑戦には「自身の可能性を試したい」「夢をかなえたい」――など、純粋な気持ちもあるだろう。だが、プロフェッショナルである以上、能力を金額という形で具象化したいという欲求がある。このままでは、トッププレーヤーはすべてメジャー・リーグへ行ってしまう。日本球界にとっては厳しく不利な状況が今年以降も続くが、手をこまねいているわけにはいかない。対抗措置は当然必要となってくる。

出来高をすべてクリアすれば8年総額で約1億ドルとなる契約をドジャースと結んだ前田健太。日本球界では考えられない額だ/写真=Getty Images



 メジャーでは昨年末、ドジャースからフリーエージェント(FA)となったザック・グリンキーが、ダイヤモンドバックスと6年総額2億650万ドル(約254億円)で契約したと伝えられている。ちなみに日本のプロ野球選手の最高年俸は、広島・黒田博樹の6億円。メジャー・リーグに現在の日本球界は太刀打ちしようがないが、それなりの年俸を支給できる財力は不可欠だ。

 メジャーが身近になればなるほど、必然的に日本球界の年俸も連動して高くなる。サッカーのように減額制限をなくすという方法もあるが、十分な解決策とはいえない。選手会の反発も大きいだろう。年俸を上げるためには、大幅な増収策を考えなければならない。有料のケーブルテレビが一般的なアメリカとは根本的な環境が違うため、日本では莫大な放映権料は望めない。独自の財源を生み出すことが求められることになる。どうすれば経済的基盤が強化できるか。そこが日本球界の今後の課題となってくる。

 球団の主な収入は、これまで入場料とテレビやラジオの放映権料だった。だが、さらなる増収のためには、スポンサー料や広告料、ロイヤリティー収入などを財源として安定確保することが重要となってくる。

 武器となるのが本拠地球場だ。ここ近年、ソフトバンクがヤフオクドーム、オリックスが京セラドームを買収するなど、本拠地球場を自己所有することで、広告料やテナント料、野球以外の各種イベントなどの収入が図れるようになった。楽天のコボスタ宮城のように持ち主の公共団体から格安で借り上げ、同等の権利を得ている球団もある。行政等の全面的な協力が得られない場合、本拠地移転を球界全体でサポートするくらいの英断があってもいいのではないのだろうか。

 テレビ等の放映権料が頭打ちにある中、主要メディアとなってきたインターネットの有意義な活用方法はないのか。アパレルなどトレンドになりそうな商品や業界とタイアップして、もっと大規模な売り上げが見込める独自のマーケットを確立できないのか。大幅な収益増は球団単位では限界があり、球界全体で取り組むほうがいい。日本野球機構(NPB)と12球団が出資して設立した株式会社NPBエンタープライズは営利活動ができるのだから、もっと斬新かつ画期的なアイデアを出し合ってほしい。(金額は推定/文責=編集部)
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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