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日本球界の未来を考える

第115回 侍へのモチベーション

 

12球団が目的意識を共有すれば侍プロジェクトはさらに盤石になる


 野球日本代表「侍ジャパン」が、3月5、6日にナゴヤドームと京セラドームで台湾代表との試合を行う。来春開催予定の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた強化の一環で、2月中旬に小久保裕紀監督がメンバーを発表。トリプルスリーの山田哲人(ヤクルト)、シーズン最多216安打を放った秋山翔吾(西武)、菅野智之(巨人)、筒香嘉智(DeNA)ら一線級が名を連ねている。「その時点の最強チームを」と小久保監督は侍ジャパンの編成について常々話しているが、日本で最高の戦力をそろえることが価値を保つ絶対条件であるのを、関係者はあらためて肝に銘じるべきだ。今回の台湾戦でアマ最速156キロを誇る創価大の田中正義日本ハム大谷翔平阪神藤浪晋太郎らが参加できなかったのは残念だが、代表チームに恥じないメンバー構成は喜ばしいことだ。

 WBCをはじめとした国際大会を視野に常設化された侍ジャパンは、2013年に小久保監督が就任。昨秋に初開催された国・地域別対抗戦のプレミア12などを経て、徐々に土台を固めている。心強いのが、近年雪解けを果たしたプロ・アマ両球界の協力体制。当初はプロ野球代表だった侍ジャパンだが、今は社会人、大学、高校などアマの各世代にまで範囲が拡大。これが、侍プロジェクトに好影響を与えている。

 キャンプから注目を集めているのが、楽天オコエ瑠偉中日小笠原慎之介ロッテ平沢大河ら甲子園を沸かせた高卒ルーキーたちだ。彼らのコメントで興味深いのが、侍ジャパン入りについて。オコエは「WBCや五輪に出るために、日本代表になれるような選手になるのが目的」と熱っぽく語った。その思いにつながったのが、侍ジャパンのU-18(18歳以下)として出場した昨年のワールドカップ(W杯)だった。

昨年、高校日本代表としてジャパンのユニフォームを着て、世界と戦ったオコエ。そのときの興奮がトップチーム入りを目指す原動力となっている/写真=Getty Images



 甲子園球場で行われた決勝で、日本はアメリカに1対2で痛恨の敗戦。悲願の初優勝を逃した。負けこそしたものの、日の丸を背負ってトーナメントを勝ち上がる真剣勝負で、ゾクゾクするような緊張感を体験。国際大会が持つ独特の空気に触れ、さらに上のステージで「リベンジをしたい」(オコエ)という気持ちになった。小笠原は「プロに入っても、この気持ちを忘れずに、さらにレベルアップを図りたい」と口にする。次の世代の主役たちが高いモチベーションを抱いているのは、侍プロジェクトへの明るい未来を感じさせる。

 侍ジャパンを中核とした事業を統括するNPBエンタープライズも、サポート体制を強化。ビジネス面でも放映権やロイヤリティー戦略などが功を奏し、主催(世界野球ソフトボール連盟=WBSC)サイドとは別のNPBの黒字として1億2000万円の黒字を計上した。コンテンツの質を下げなければ、国際化への可能性を秘めた将来が開ける。

 日本野球機構(NPB)と12球団が目的意識を共有してエゴを抑え、理想を追い求め続けることができれば、プロジェクトはさらに盤石なものとなる。
日本球界の未来を考える

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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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