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日本球界の未来を考える

第120回 若き指導者の新方針

 

今後のトレンドになる可能性が高い、MLBの考えに近い攻撃的な二番打者


 待ちに待ったプロ野球公式戦が開幕する。新監督を迎えた5球団をはじめ、日本最速右腕で投打の二刀流も楽しみな大谷翔平、3年連続日本一を目指すソフトバンク――など、今年も見どころは満載。そんな中、特にセ・リーグで例年以上に攻撃的な野球が目立ちそうなムードが立ちこめている。

 アグレッシブさを前面に押し出そうとしているのが、新たにDeNAを指揮するアレックス・ラミレス監督だ。ここ3年間で計45本塁打をマークするなど一発を秘めた梶谷隆幸を今年から二番で起用(開幕はケガで欠場予定)。不動の三番だった好打者に、送りバントをさせないことを宣言した。「走者進塁のためとはいえ、むざむざ打者をアウトにしたくはない」というのが理由で、制約を設けず、基本的に自由に打たせる方針。二番という打順に定着している「つなぎ」という概念を真っ向から否定している。

攻撃的な野球を志向しているDeNAのラミレス監督/写真=小山真司


 二番打者に攻撃性を求めたのは、昨年のセ・リーグを制したヤクルトも同様だった。一昨年まで主に三番に据えていた川端慎吾を二番に抜擢。川端は自己最多の195安打を放ち、打率.336で首位打者のタイトルを奪取した。チームは574得点、打率.257はともにリーグトップ。二番打者がきっちりとチャンスメークをし、クリーンアップが得点するというのが昔からの日本野球だったが、ヤクルトはそのセオリーを覆した。

 バントをしない二番打者といえば、1999年の日本ハム小笠原道大が挙げられる。同年から2年連続で犠打は0。小笠原は2000年にリーグ最多の182安打で、打率.329、31本塁打、108打点をマーク。チームは打率、本塁打数、得点数、盗塁数がすべてリーグトップとなり、攻撃力を前面に出して優勝争いを繰り広げた。

 ラミレス監督は「梶谷は首位打者を獲得できる能力がある」と強調。二番でのポイントゲッター役を期待している。「最強」とささやかれるソフトバンクも昨年は二番に中村晃が座り、打率.300の成績でともに12球団トップの651得点、打率.267の強力打線の原動力となっている。メジャー・リーグの考えにも近い攻撃的二番打者は、これからのトレンドになりそうだ。

 そんな流れに興味を示しているのが、阪神を11年ぶりのリーグ優勝に導こうとしている金本知憲監督だ。二番候補の一人として考えているのが、ベテランの鳥谷敬。打撃力アップを優勝の必要条件としている同監督は、「打順が早く、たくさん回ってくるから、出塁の確率が高い選手がいい」と説明。一番やそのほかの打順の絡みもあるから流動的ではあるが、「打線が活性化するし、得点力も上がる」と話す。

 ヤクルトの真中満監督をはじめ、ラミレス、金本両新監督は野手出身。今まで以上に攻撃に主眼を置くのは当然の成り行きだろう。交流戦で打ち負けたパ・リーグに歯が立たず、それぞれのチームの脆弱さを露呈したことも、セの若き指導者たちの方針を固める理由になったのかもしれない。同じく野手出身の巨人高橋由伸広島緒方孝市中日谷繁元信らそれぞれの監督はどうするのか。新時代に突入した野球は、さらに面白くなりそうだ。
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週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

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