週刊ベースボールONLINE

日本球界の未来を考える

最終回 プロ野球の明るい未来を創りだすために

 

プロ野球の明るい未来は、球界全体の謙虚さとたゆまぬ努力が創り出す


球界のより良い未来へ、すべてが一体にならなければいけない/写真=Getty Images


 プロ野球開幕直前に、巨人の野球賭博問題が再浮上した。昨秋発覚した3選手に続き、新たに高木京介投手の関与が発覚。渡辺恒雄最高顧問、白石興二郎オーナー、桃井恒和会長の球団幹部が引責辞任したが、度重なる不祥事に「またか……」と思うファンも多いだろう。モラルなき世界が敬意や支持を受けることはない。

 問題は、昨年の発覚時に聞き取り調査を徹底できていなかったという事実だ。関係者は「捜査ではなく調査。解明には限界がある」と話すが、そのままでいいのか。自浄能力さえ疑われる現状は悲しい。

 メジャー・リーグ機構(MLB)では有害行為に対する専門家によるセクションがあり、捜査に近い権限をもって事実確認をすることができる。今回の一連の騒動を教訓に、プロ野球も早々に善後策を講じるべきだ。高木投手の場合、一度は否認していたが、一転して本人が認めたことで関与が明確になった。性善説に頼っているだけでは、何もしないのと同じだ。

 清原和博元選手の覚醒剤問題に関連し、「なぜ全選手の検査に乗り出さないのか」など、球界の姿勢に甘さを指摘する声も多い。プロ野球では2007年から世界アンチ・ドーピング機関(WADA)規定に準じ、独自検査を実施。日本野球機構(NPB)は「この検査で、覚醒剤など違法薬物の検出も可能と認識している」と説明するが、もっと詳細なデータを対外的にアピールすべき。「球界は薬物摂取など有害行為を絶対に認めない」という大々的なキャンペーンは、再発を防ぐ自己啓発にもなる。

 戦後の混沌とした時代から興行という形態で成長してきたプロ野球は、なかなか村社会的発想を拭い去れない。人気球団をはじめとして、社会との“ずれ”が目立つのはなぜか。それを取り巻く環境も同様だ。

 テレビ業界が激しいコンテンツの奪い合いをするようになった30年前くらいから、選手に取材の対価として金銭を支払うようになった。最近はインタビュー等に対して報酬を求める球団も多く、情報発信は“お金次第”という風潮が強くなっている。プロのアスリートという自負があるのならば、グラウンドの結果だけで稼げばいい。

 活字媒体も同様。多様なメディアに対抗するためか、コミュニティーに反することへの恐れがあるのか、選手の間違いをいさめるような厳しい論陣を張れずにいる。批評精神が麻痺すれば、球界に真のスターを育てる手助けなどできない。閉鎖的な構造は、一般社会とはかけ離れた思考回路と傲慢さ、そして望ましくない結末を生む。

 野球は今や、復帰を目指す五輪、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、プレミア12などワールドワイドな競技になっている。世界に開かれつつあるスポーツの先進国として、日本は率先して範を示すべき立場となった。

 来春予定の第4回WBCは、まだ主催者MLB側から開催のリリースがなされていない。過去大会で利益配分をめぐる問題で不参加騒動が起きたことなどを踏まえ、NPBはMLB側と意見をぶつけ合っているのか。MLBが以前よりも大会に熱意がないとささやかれる中、日本側のアクションは大会存続に大きな意味を持つ。ポスティングシステムは有効期間が終わり、MLBとの新たな話し合いが必要。MLBへの五輪参加の働きかけなど、グローバル化を見据えてやるべきことは多い。

 侍ジャパンのあり方など、一部球団のエゴだけでは済まされない時代。ことあるごとにかみ合わないセ、パ両リーグもそうだが、選手会と真の関係構築を図らなければ事態は前に進まない。協約で謳うたう「文化的公共財」であるプロ野球の明るい未来は、球界全体の謙虚さと真摯に取り組む姿勢が創り出していく。
日本球界の未来を考える

日本球界の未来を考える

週刊ベースボール編集部による日本球界への提言コラム。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング