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【投手編】
解説=水野雄仁


日本ハム武田勝投手は、ストレートとチェンジアップの投げ方がまったく同じで、こういう投手は珍しいという話をテレビで解説者がしていました。どの投手でもクセなどが分からないように変化球も同じフォームで投げていると思っていたので意外です。武田投手が特別なのですか? そうだとしたら、どうして、そんなことができるのですか? (秋田県・匿名希望・17歳)


 4週目になります(11月25日号、11月11日号、10月28日号)。武田勝投手は、投球フォームがストレートとチェンジアップの見分けがつきにくかったり、ボールの出どころが見えにくかったり、ストレートと同じ軌道で小さく曲がるシュートを持ち球に持っていたりと、打者に十分なスイングをさせないための要素をいくつも持っています。そうやって詰まらせたり、打ち損じさせたりして、打者を抑えているのです。

 同じ左腕で、中日山本昌投手や、かつてオリックスのエースとして活躍した星野伸之投手なども、同じタイプと言えます。ストレートの球速は130キロ台でも、カーブやチェンジアップ、スクリューといった、それぞれ武器になる変化球を持っていて、そのボールを打者に意識させることで、逆にストレートが生きてきます。面白いもので、打者は彼らのボールを「速い」と感じるようです。スピードガンの数字ではなく、体感速度の問題ですね。

 彼らとは逆に、150キロ近いストレートを投げながら、なかなか勝ち星に恵まれない投手もいます。この差はどこで生まれるのか? やはり投球術というものを考えざるを得ません。速い球を投げられる投手というのは、少々体が開いていようが、威力のある速い球を投げていたら抑えられると思ってしまいがちです。だから、無意識のうちにスピードばかりを追求するようになり、だんだんフォームが悪くなっていく悪循環に陥ることがあるのです。それでもスピードが出ていれば、打たれる原因に本人は気付きません。だから同じような打たれ方をして、勝ち星が伸びないのです。

 武田勝投手にしても山本昌投手にしても、球速を考えればストレートだけで抑えられないことは分かりますから、その決して速くはないストレートを、いかにボールを見にくくするかとか、同じフォームで変化球を投げて惑わせるなど、抑えるための方法を自分たちなりに考えているのです。それで厳しいプロの世界で成績を残しているのです。

PROFILE
みずの・かつひと●1965年9月3日生まれ。徳島県出身。84年に巨人入団、96年に現役引退。99〜2001年は巨人コーチ。通算成績は265試合登板、39勝29敗17S、防御率3.10。
【打撃編】
解説=篠塚和典


プロ野球で、ホームランを1試合で2本、3本と打ったり、何試合も連続でホームランを打つ打者がいます。こういうときの打者は、何か技術的な特徴があるのですか。また、体調的にはどういう状態なのでしょうか。(東京都・匿名希望・16歳)


 4週目になります(11月25日号、11月11日号、10月28日号)。プロ野球で、例えば春先は状態が悪くて苦しんでいても、何かをきっかけに調子を上げて、そのまま高打率を残したり、短い期間の中で良くなったり悪くなったりを繰り返しながら結果的に2割台で終わったり、いろいろなタイプの打者がいます。これは選手個々の、悪い状態に陥ったときの対処の仕方の差ではないでしょうか。

 毎年コンスタントに高打率を残すイチロー選手でも、打席の立ち位置を変えたり、構えを変えたり、いろいろなことをシーズン中にやっています。あれだけの選手ですから、数字を追いかける部分もあるでしょう。何かを変えるときというのは、状態が悪いときのはずです。結果が出ていないのに、同じ形、同じ気持ちで打席に立っていたのでは、また同じようにやられてしまいますからね。

 だから、何かを変えなくてはいけない。それこそ、感覚的な部分でもいいのです。ネクストバッタースサークルにいて、「よし、この打席はこうしてみよう」と考えて、何かしらの変化をつけてみる。それによって何か良い結果が出てくれば、それを継続してやっていけばいいでしょう。でも、何試合かしたらダメになってしまったということもあるはずで、そういうときは結局、また元の形に戻している。でも、その違ったものに取り組んだ期間というのは、精神的な刺激も含めて、決してムダにはならないはずです。

 どんなすごい打者でも、全打席ヒットを打つことはできないのです。もちろん全打席ヒットを打つつもりで打席に入って、その結果が3割何分という打率なのです。それでも、それぞれの打席でさまざまなことを考えて、興奮したり、不安になったり、いろいろなときがあるはずです。そんな中で、多くのことを試せるのが、試合での打席なのです。今だから話せますが、私も現役時代、何年かに一度、何をやってもダメな年がありました。そのときにはもう、心境的にはあきらめの1年でした(笑)。「こういう年もあるよ」というくらいの気持ちでいないと、長く野球を続けることはできないのです。

PROFILE
しのづか・かずのり●1957年7月16日生まれ。千葉県出身。76年に巨人入団、94年に現役引退。95〜2003年、2006〜10年は巨人コーチ。通算成績は1651試合出場、1696安打、628打点、92本塁打、打率.304。

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