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Vol.18 田中英祐[京大・投手]
可能性秘めるタフネス右腕

 

周りの評価と自分の手応えの間に存在するギャップ。京大工学部に籍を置く右腕は、自己分析も実に冷静だ。それでもプロ球団が注目する好右腕であることは間違いない。
“勝負の春”を経て、田中英祐はどんな決断を下すのだろうか

取材・文=谷上史朗 写真=太田裕史



未勝利ながら異例のベストナイン選出

「京大初のプロへ意欲」

 年明け、関西のスポーツ新聞にこんな見出しの記事が出た。京大工学部に属し、プロの注目も高まってきた昨年時点では、大学院や研究職としての企業への就職も含め、進路についてはっきり口にすることはなかった。ただ、報道を受け、あらためて尋ねると「完全に決めたということでは全然なかったんですけど。結構、そういう感じで載ってましたね」と笑った。両親からは「好きなようにしたらいい」と言葉ももらったが決断には至っていない。「なんか周りの評価と自分の手応えが全然合ってないというか、自信を持つところまで全然いってないです」

 高校は兵庫の進学校、白陵。3年間で挙げた公式戦の勝ち星は1つのみ。高校時代の思い出を聞いても「滝川二高の練習に参加して1本バッティングで投げたことがあるんですけど、そこで結構抑えられたことはよく覚えてます」。なかなか渋い。

 それでも県下の有力校が密かにマークしていた素質が京大で開花。1年秋から主戦となると、2年春にはリーグ記録を更新中だった連敗を60で止める完封勝利(対関学大)を収めた。秋は関大を破り京大としては02年秋以来となる開幕戦勝利を飾り、昨春は近大、立命大から勝利(立命大戦はリリーフ)、秋は6試合で実に68回を投げ防御率1.06。特に立命大戦では延長21回(再試合)、同大戦でも延長15回(サヨナラ負け)を投げ抜き、心身ともに強さを披露。未勝利ながら異例のベストナイン選出ともなった。

未完な部分が残るが数年後にどうなる?

 少なくとも関西でドラフト対象の大学生を見渡し、現段階で田中以上の投手は見当たらない。ただ、強豪私学相手に着実に結果も積んできても、本人の中ではまだ自信を感じるまでに至っていない。

「僕の中では、たまたま21回も15回も投げられた。たまたま近大にも勝てた……そんな感じが強いんです。そんな風に思う理由の1つには、高校のとき、死ぬほど野球をやってきたヤツにはどこかで・・・

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