個性的なフォームである。昨年の都市対抗後、日本野球連盟から「反則投球」であると指摘を受け、一冬をかけ改良を重ねた。JABAスポニチ大会、長野大会と公式戦で確かな手応えをつかんでいる。
取材・文=大平明 写真=松田杏子


　背中を反らせて大きく振りかぶり、胸を張り、両腕とヒザでリズムを取るようにして、反動をつけ勢いよく投げ込む。鈴木大貴は182cm90kgの立派な体格もあって、投球に迫力を感じさせる。

　鈴木を語るにはまず、その唯一無二で個性的なフォームに触れなければならないだろう。投手を始めたのは福島東高に入学してすぐのこと。もともと、マウンドに上がりたい気持ちがあったが、小学生時代はソフトボールチームのキャッチャー。中学時代は一塁手や外野手を務めており、高校からやっと念願のポジションでプレーできることとなったのだ。

「当時のチームには、横から投げる投手がいなかったのでサイドスローにしてみました」と、いきなり変則フォームからスタート。ただ、「たまたま体も横回転で投げるタイプだったので、合っていました」と徐々に頭角を現していき、2年秋にはエースも、甲子園とは縁がなかった。

　流通経大への進学後は「ずっと150キロを目標にしてきた」ということもあり、腕を上げてスリークオーターにしスピードを求めた。「参考にした投手はいません。自分で研究を重ねていったら、大学4年のころには今の投げ方になっていたんです」と、現在のフォームの原型は自然と出来上がっていったという。フォームに対する正直な気持ちを聞いてみたところ「周りからは独特と言われますし、自分でも『変なフォームだな』とは思うのですが(笑)、とても投げやすいので、自信を持っています」と堂々と語る姿が印象的だ。

昨年の都市対抗で味わった痛恨の1球

　TDKでは入社後、新型コロナ禍に見舞われたものの、その期間を利用し・・・